ヒデキマツバラの猫道Blog

弾いて歌って踊るサウンドクリエイターが綴るドラネコ風エッセイ

パワーはどこに宿るのか

パワーは名前に宿る。

 

それは人の名前に限らない。

物体、土地、催し、病気、役割、概念etc

ありとあらゆる名前に力が宿る。

 

それが人間にとって正のパワーであれ負のパワーであれ

名づけた途端、生命力が宿り、すべてが機能し始める。

まるでスイッチをオンにしたように

すべての明かりが輝き、勢いよくモーターが回り始めるのだ。 

 

そして人間社会を巻き込みながら、その名に呼応したものを引き寄せ、

名前に準じた成果を生み出す。

 

それは創作においても同様である。

タイトルをつけないと、僕は曲が書けない。

少なくともテーマやコンセプトが決まらないうちは

何を書いてもただの断片である。形にはならない。

 

ところが、ひとたびタイトルさえ決まれば

そこに実体が現れる。

母親が胎内に宿した新しい生命のように血が通い始め

細胞分裂を始め、鼓動を打ち始める。

僕はその生命体の息吹を感じ、産声に聞きほれる。

 

夕べ、新たな作品が生まれた。

「Nocturnal Flower 〜夜香花〜」というピアノ曲である。

とても感傷的な作品だ。

 

この曲に名前がつくまでには、ちょっとした発見があった。

 

夜しか咲かない花がある。

よく知られてるのが月下美人夜顔

 

でも、花が夜に咲くのはなぜだろう。

調べてみたのは、ほんの好奇心だった。

 

熱帯の住人は暑い日中を避け、涼しくなった日没後に活動する。

それと同じ理由で、熱帯の昆虫は夜行性が多い。

従って、花粉を昆虫に運んでもらう花も、夜に咲くものが多い。

 

なるほど、気候が生態系に影響を及ぼしてるわけか。

雑学的に面白い発想だ。

 

そうして更に先を読み進めた途端、

僕は宝箱へ通ずる扉を開けたことを知った。

 

昼の明るい太陽光の下、花は豊かな色彩によって昆虫にアピールする。

しかし月光や星明かりの下では色が失われ、花は暗く目立たない。

そこで色の代わりに、花は強い芳香を発して昆虫を惹きつける。

そうした花の色は白く地味だが、その香りは街を覆い尽くすほど強い。

 

こ、これは!

まるで人目を忍び、夜の帳の中で逢瀬を遂げる恋人たちではないか!

すべての生命が生を喜び合う昼の光の中では許されざる関係。

なんたるセンチメンタリズムの極み。

夜咲く花に、僕はロミオとジュリエットを見たのだ。

 

その発見はクリエイターにとって金塊にも等しい。

 

決め手が見つかれば、あとは早い。

名前をつけ、断片にすぎなかった旋律を創造の羊水に浸すのである。

 

こうして名付けたNocturnal Flower(夜行性の花)であるが

日本人的にわかりやすいニュアンスがほしくて

造語的に「夜香」とサブタイトルをつけようとしたところ

実際に夜香花(ヤコウカ)なる花まで存在するらしい。

 

それはひときわ香りの強い花のようで

英語名をナイト・ブルーミング・ジャスミン(夜咲きジャスミン)と言う。

こんな花である。

 

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まさしく純白のジュリエット。

これこそ題目にふさわしいモデルだ。

 

こうしてタイトルと中身が固まれば、迷いは一切なくなる。

主題、作曲技法、編曲技法、すべてが渾然一体となって

完成へむけて成熟していく。

 

それはオーダーメイドの服作りようなもので

生地感、縫い方、サイズ感、色どり、手触り、細部の装飾性

すべてが合致して世界にひとつしかない服ができるのに似ている。

 

こうして夜香花に導かれ、ひとつの曲が編み上がった。

実際、演奏する際も編むように弾くとうまくいく。

この作品にふさわしい響きや間が得られるのだ。

 

さて、これで万事終了。

ではない。。。

 

夕べ完成したこの曲、明日にはステージで披露しなくてはならない。

今夜は夜香花でなく、夜弾人になって練習に励むのみである。

 

お近くの方は是非お立ち寄りください。

 

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ミュージックハウス「美美の環」主催

ヤマハサロンコンサート

Happy Sundays

 

公演日:2016年10月2日(日) 14:00-15:30

会場:ヤマハピアノサロン(ヤマハ広島店3F)

入場料:1000円

出演:松原リディア美江、ヒデキマツバラ 他

お問い合わせ:info@miminowa.com

http://www.miminowa.com