ヒデキマツバラの猫道Blog

ドラネコ視点の少し風変わりな猫道(キャットウォーク)ブログ

水槽ぐらしの舞台人

シェールの「ビリーブ」という歌に、こんな一節がある。

“Do you believe in life after love?”

(愛する者が去った後の人生なんて考えられる?)

 

水槽で泳ぐ熱帯魚のごとく、

人は「日常」という水槽の中で棲息している。

 

「家庭」という水槽。

「仕事」という水槽。

「愛」という水槽。

 

そんな水槽ぐらしは、時に狭く不自由かもしれない。

けれど、目先の不満を差し引いても、あなたにとってそこは

かけがえのない「よりどころ」である。

 

ところが、ある日、あなたは気づく。

水槽は永久に水を湛えているわけではないと。

ポトポト水漏れしながら、あるいは前触れもなくごっそりと、水は消え失せる。

そのあとに立ち現れる非日常な陸地など、どうして想像できようか。

 

そういう僕は「舞台裏」という水槽に棲息している。

だから2016年12月4日が終わった後の日々は、異郷の地も同然だ。

 

 

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舞台裏という住み処

ミュージカルとソロライブの企画に着手したのは半年前。

まだ梅雨のさなかであった。

 

以来、クリエイティブな制作活動と、

それに伴う、山ほどの非クリエイティブな実務の狭間で、

意気込み、思案し、足をとられ、行き詰まり、気落ちしては立ち上がり、

ちょっとした短編小説ほどの日々を送ってきた。

 

向かい風が吹きつけてくるのは、決して愉快なことではない。

でも、それは何か特別なことをやろうとしている証。

 

あなたも挑戦者であろうと決意して歩みを進めていけば、

きっと追い風になってくれる人がもたらされるだろう。

 

そうして今、ジェットコースターで例えるなら、

軌道に乗り、発着点からゴトンゴトンと昇っていって、

いよいよ最頂点に達する寸前、という局面である。

 

3日後、ステージベルが鳴って幕が上がれば、もう何者にも止められない。

舞台は自ら意志を持った生き物のように突き進む。

 

ミュージカル「音楽名曲物語」 

ミュージカル「音楽名曲物語」は、ちょっとユニークな西洋音楽史フィクション。

バッハやモーツァルトら、歴代の芸術音楽家たちが時代を超えて集結、

史実を織り交ぜながら、一夜限りの音楽夜会が催されるのである。

聴かせて魅せてクスッと笑わせる、そんな舞台だ。

 

役者としては7作目の舞台、

演じるのは準主役モーツァルトである。

物語の進行役であるモーツァルトは、主役を上回るほどセリフが多い。

 

それを音楽制作や演出を兼任しながら演じるとなると、

車を運転しながら料理を作るに等しい。

そんな奮闘ぶりもまた、舞台に生きる喜びだ。

 

最後の通し稽古では、成功を確信させることが起きた。

共演者、スタッフ、みんなが家族になったのだ。

あたたかさと豊かさ、磁石のように心と心を結びつける力。

 

ひとりじゃない。

ひとつなんだ。 

 

 

一体化したものから生み出されるパワーは底知れない。

立場やキャリアは違えど、僕らはこころざしを同じくした、

ワンステージ限りのソウルメイトなのだ。

 

そんな仲間意識に満ちた、心動かされる時間だった。

 

ソロライブ

ミュージカルのあと、ソロライブが控えている。

ここでもちょっと他にないユニークな趣向を凝らした。

 

弾いて歌って踊って、僕は4つのキャラクターになる。

ちょうちょ、騎士ロミオ、狙撃手、そしてピーターパン。

 

一見なんの脈絡もないこれらをつなぐ一本の物語を

会場のお客様にはご覧頂けるだろう。

 

体全体で優雅に羽ばたき、殺陣の後にさらりとジャズを奏でる、

そんな演出構成であるが、当然ハードルは高い。

 

ひとりで稽古を重ねて、流れがつかめてきた今でも、心身ともいっぱいいっぱい。

少しだけ弱音を吐かせていただくと、稽古後の虚脱状態が半端ないのである。

 

夢を紡ぐことは、ひたすら現実に生きる作業だ。

そこからファンタジーが生まれる。

そして羽が生えたように自由になれる。

そんな魔法のような場所が、舞台である。

 

ステージドアの先

12月5日の夜明け、それは大半の地球人にとって、

いつもと変わらない憂鬱な月曜の朝かもしれない。

 

でも、その朝は僕に何かをもたらしてくれるだろう。

まだ想像もできない何か ー次なる目標ー を。

それが2016年12月5日からを生きる糧になるだろう。

 

愛する2つの舞台に捧げた24週間180日。

舞台裏という素敵な水槽で熱帯魚でいられるのも、あとわずか。

 

一気に水を抜いたら、勢いよく表舞台へ流れていこう。

みんなが待つ夢の舞台へ。

 

 

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