ヒデキマツバラの猫道Blog

音楽/創作活動のかたわら発見した気づき、笑い、癒し、そして魔法をつづったドラネコ風エッセイ

ボクの子育て

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泥のような眠りから目覚めた。

長編映画のごとき夢を三本立てで見たことは確か。

惜しいことに、ほんの断片しか覚えていない。

 

窓を開け、大地に挨拶する。

風の贈り物を深く吸い込む。

朝一番の水で喉を清める。

そして火を呼び起こす。

 

いつもの朝の日課。

 

でも、今朝がいつもと少し違うのは、

今年最後の大仕事を終えたあとだから。

 

その楽曲は、とある作曲家さんの新作だった。

ヨーロッパで頻発するテロを題材に、

人間の尊厳や愛の心を、一輪の花に託された作品。

 

「歌詞も作ったんですけど、ふさわしい言葉にできなくて」

そう言って、作詞・補作曲・編曲を依頼された。

 

さて、他人の作品を手がける時、それも存命で、

かつ現役で活動されてる音楽家さん直々のご依頼となると、

よその赤ちゃんを我が家で預かり育てるにも等しい。

 

「まあまあ!こんな立派に育って」と言われる姿で

生みの親の元に送り届けるのが、我が使命なのだ。

 

あなたがデザイナーなら、

誰を広告モデルに起用するかで商品イメージを左右する。

童話作家なら、誰に挿絵を依頼するかで

本の印象が決定づけられる。

映画脚本家なら、誰を主人公に抜擢するかで

出来も興行成績も明暗を分ける。

 

この人なら間違いないという保証。

この人なら想定外のことをしてくれるという信頼感。

我が子を里子に出す彼らの心は如何ばかりか。

 

さぁ、腕の見せ所だ。

この子にしかない個性を開花させてみせるぞ。

 

「まるで一冊の本にしていただいた気分です」

納品の日、作曲家さんは喜びの声を上げた。

 

歌詞とサウンド、そこに込めた意味と想いを

ひとつひとつご説明して差し上げるたびに、

その方の瞳は生き生きと輝いた。

まるで、次々届くクリスマスプレゼントを紐解く子供のように。

 

「お話伺ってたら、新しい曲のアイディアが浮かびました。

 来年もまた、よろしくお願いします」

 

できたての音源と歌詞表、楽譜を大事にかかえると、

その方は、キラリと薄暮の中に消えた。

 

こうして、僕の育てた692番目の子が巣立っていった。

 

晴れて冬休み。

読みたい本、作りたい曲、書きたいエッセイがいっぱい。

またたく間に休暇が終わってしまいそうだ。

 

でも、その前にひとこと。

 

今年1年に、ありがとう。

 

 

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