読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ヒデキマツバラの猫道Blog

弾いて歌って踊るサウンドクリエイターが綴るドラネコ風エッセイ

ネーミングの才

f:id:hidekimatsubara:20170331182938j:plain

4月にサロンコンサートを控えている。

ちょうど1年前にカワイ楽器店さんから打診を頂いて、このたび実現することになったのである。

 

新しいコンサートホール

そのホールの下見に行ったのは昨夏のこと。

ビルの老朽化に伴い、なじみ深い八丁堀えびす通りから、原爆ドーム近くのエリアへと移転したカワイ楽器広島店。

真新しい店舗奥に併設されたのは、伝統と未来感が同居した上質な小ホール。50名定員の理想的な音楽サロンで、試弾したピアノのなんと美しく味わい深く響くことか。

さらに僕を唸らせたのは、ホールに付けられた名前であった。

その名も「パーチェ」。イタリア語で「平和」を意味する。被爆ヒロシマに所以してのものであろうか。

その通りです、よくご存知ですね、と新人担当者。

聞くと、各地のカワイ音楽ホールには、それぞれの街のイメージを象徴する言葉がイタリア語で名付けられているのだという。それをひとつひとつ丁寧に説明してくれた後、彼は最後にこう付け加えた。

「でも、ここの名が一番ふさわしいですよね。」

 

名は体を表す

日本でも命名権が導入されて以来、スポーツ競技場や由緒ある音楽ホールに大企業や専門学校の名が乱立している。それも新しいビジネスの形だとは思うものの、建物の名称も人の名前同様、それにふさわしい品性をもたせていただきたいものである。

その点でカワイのような企業の存在は、実に頼もしい。その土地ならではの特性を敬い、芸術的に高めていこうとする精神。その人間性あふれる企業理念に心打たれる。

「パーチェ」

慰霊と希望を感じさせる芸術的なネーミングセンスが素晴らしい。重すぎず、軽すぎず、明るく開けた響き。

少し残念なのは、そうしたハートのこもった発想が平和都市ヒロシマの中から育まれたものではなく、センスの都、東京からもたらされたアイディアだという点である。

その響きの良さを直感で味わえる芸術肌な新人担当者にしても、地元出身ではない。

広島とは縁のなかった方たちの方が、この街を文化的かつ世界的な新しい視点で眺め、品のある打ち出し方を心得てくださっているのかもしれない。

なんにせよ、こうした豊かな精神的土壌の上で演奏活動ができることは、音楽家としてのみならず、一市民として僕に与えられた恩恵だと有り難く感じる次第だ。

 

安息の中に

ところで「パーチェ」といえば、真っ先に浮かぶ旋律がある。

映画「ハムレット」テーマ曲「イン・パーチェ 〜安息の中に〜」である。

プラシド・ドミンゴやボーイズソプラノの歌唱で知られているが、僕が知ったきっかけはサラ・ブライトマンのアルバム「Timeless/タイム・トゥー・セイ・グッバイ」であった。名曲ぞろいの同アルバムの中でも、とりわけ愛聴している作品である。魂の糧となる歌だ。

映画音楽作曲家パトリック・ドイルによる耽美極まる旋律は、あなたが生きる杖を必要とする時、そばで温かく寄り添ってくれるであろう。

 

ふたつの計画

パーチェホールでのコンサートに向けて、僕には計画がふたつある。

ひとつは新しい楽曲を作ること。現段階では、まだ一節も出来上がっていない。本番までに何をどう形にしていけるのか、自分でも楽しみなところである。

もうひとつは、あるピアノ協奏曲の演奏。いつか発表できる時が来るまで、大事に温めてきた作品である。表現上、pp(ピアニッシモ)やppp(ピアニッシシモ)という繊細な響きを生かせる空間での演奏が絶対条件なので、この度の機会を大いに歓迎したい。

 

春を愛でるサロンコンサートの日曜日。こちら方面にお出かけする機会があれば、ぜひ足を運んでいただきたい。

 

 

f:id:hidekimatsubara:20170331182635j:plain

La Primavera Concert ラ・プリマベーラ・コンサート

公演日  2017年4月16日(日)14:00~15:30

会場   カワイ広島ピアノサロン「パーチェ」

    (広島市中区紙屋町2-2-6 サンモール電車通り口)

主催   ミュージックハウス美美の環

出演   松原リディア美江、ヒデキマツバラ 他

一般入場料 1500円

お問い合わせ先  info@miminowa.com