そんなんありか〜!って叫びたくなる時、あるよね。
ちょうど1年前の投稿記事がそれ。
嵐の前
年末も押し迫ったクリスマスイブのことだった。
「そういえばここ数日、とんと新着メール来ないな」
我がスタジオ専用のメールソフト。
起動し直しても、新着メールが届く様子はない。
「ま、そんなこともあるのかな」と、やることリストに目を移す。
そこには年内に済ませなきゃいけない雑用が増殖中。
それを消化していくうち、
<新着メールが来ていない=新着メールはこの世に存在していない>
と脳内ですり替わった。
そのままさらに日が過ぎて行ってやっと「変だな」と思い始める。
クリスマスを挟んで1週間近く、1通のメールも来ないとは。
商材DMメールどころか、あらぬ国の美女を名乗るフィッシングメールさえ来ない。
さすがにおかしいだろ、これは。
そこでメールサーバーにアクセスしてみたところ
ドカーンと届いてた!!!
レッスン生からも。
取引先からも。
商材業者からも。
あらぬ国の美女からも。
激情
あまりの出来事に心はかき乱され、狼狽した。
調べたら、メールソフトに不具合があったようだ。
その日、やることリストなんて吹っ飛んだ。
ホワイトタキシードで決めた花婿が、田植え前の泥田に突き落とされた気分。
これ、ただごとじゃ済まされないでしょ!!!
恐怖に心臓を鷲掴みにされた。
よりによって仕事用のオフィシャルなメールボックスが1週間近くもの間、放置状態だったとは。
どれだけ人々の信用を失ったことだろう。
僕の信用が落ちるだけならまだしも、スタジオ全体の信用問題に関わる。
即刻、謝罪しなければ。
電話行脚。
一段落ついて、あとは個別にメール謝罪する段。
時計を見ると、ランチ時刻をとうに過ぎ、午後のレッスンもやがて始まろうとしている。
わななく指で1通目の返信を打ち始めた。
いや、いけない。
それより先にすべきことがある。
事態を収拾するため、自分なりにケジメをつけること。
でも酷く気乗りのしないこと。
それはオフィシャルサイトと当ブログでの公式謝罪だった。
1 とにかく謝罪する
2 事実と経緯をありのままに述べる
3 今後の展望を明らかにする
4 理解を求める
それを文書化したものが、 冒頭記事「お詫び」だ。
書いている間、様々な感情が去来した。
メールを送ってくれた方々に申し訳ない。
ソフトの不具合に気づかなかった自分が情けない。
こんな恥さらしなことを世界に発信している自分がみっともない。
特にネットでの発言や発信に関しては、確たるポリシーをもっていた。
人を不快な気分にさせるネガティブな話題は慎もう。
そんなものはテレビや新聞、ネット、人々の愚痴や不幸自慢の中に溢れかえっている。
世界に向けて口を開く時、僕は笑いや慰め、勇気や愛を語ろう!
それがどうよ!
よりによって愚かなまでにマイナスな話題を世に提供しようというのである。
とてもじゃないが、投稿内容をカテゴライズする気にさえなれなかった。
そんなわけで、今回をもって投稿50回目記念を迎えた当ブログの全記事のうち、唯一カテゴリー分けされてない記事こそ、この「お詫び」なのだ。
皮肉、悪魔、そして勝利
ところが、どうしたことであろう。
人生って読めないものである。
あまりにストレートすぎる謝罪タイトルが、かえってネットユーザーの関心を引いてしまったのか。
その夜ブログを開いてみたところ、開設以来、最多の読者が訪れていたのだ!
当時はブログを始めてまだ5ヶ月。
読者の興味をグッと引きつける中身あるものを書こうと奮闘していた時期。
アクセス数が二桁に届かない日もあれば、まれにゼロの日さえあった。
ケジメをつけるため果敢に掲載こそしたものの、僕だって所詮一介の弱い人間。
内心では多くの人の目に触れることを恐れ、こういう時こそ読者ゼロであってくれと願った。
なのに、なんという皮肉。
数日から数週間かけて仕上げたエッセイよりも、自分のしでかした大きな失態を詫びた所要時間3分の謝罪文が、かつてない読者数を引き寄せている。
そんなんありかぁぁぁぁぁ〜!!!
泣けた。。。
とにかく泣けた。。。
そして学んだ。
人間は作為めいたものよりも、ありのままを好むのだと。
その晩、いい年齢をした大人が、それも音楽スタジオの代表者たる者が、涙目のまま個別の謝罪メールに取り組んでいた。
言い訳だけはしたくなかった。
すべては自分の不注意と過ち。
それを洗いざらい書いて詫びた。
失意の朝、眠りについた。
僕の失態レベルから予想される相手方の反応は、良くて無視、普通で叱責、悪くてターミネート(すべてオジャンってことね)。
目覚めた時、まっさきに頭に浮かんだこと。
「iMacから100万キロ彼方にいられたら!」
怖くてメールソフトは起動できない。
そこでまずブログの様子を覗いてみる。
すると昨日よりアクセス数が増えているではないか!
なんたる、なんたる皮肉!
創作意欲に燃えたエッセイは見向きもされず、恥と自己嫌悪と悔恨と失望感の塊でしかない文書の切れ端に嬉々として食いついてくるハイエナども!
人間って残酷だ。
その瞬間、僕は世界一の厭世家だったにちがいない。
それほど最悪の気分を味わえば、それ以上どんな悪魔が加わったって一口に飲み下せるものだ。
覚悟を決めて、大胆不敵に悪魔のメールソフトを起動した。
そして僕は悟った。
この騒動に関する一連の出来事は、すべてパンドラの箱だったのだと。
すべての悪しき存在が箱から飛び出していった後、最後に箱の底に残っていたもの。
それは謝罪メールを送った方々から届いた、励ましと同情のお言葉だった。
人間って慈悲深い。
その瞬間、僕は世界一救われた者だったに違いない。
こうして、かつてない規模で自分の汚点を世界にさらした僕が、それ以前よりも信頼を勝ち得たのである。
人生って深い!!!
深いよ!!!
これを読者に伝えなきゃ、50回も連載を続けたブロガーの名がすたる!
告解
実を言うと、もうひとつ告白すべきことがある。
当初その「お詫び」記事は、ほとぼりが冷めたらブログから削除するつもりでいた。
ネガティブなものを記念碑のように後生大事にする趣味はない。
第一こんなことが僕の敵に知れたら、鬼の首を取ったみたいに狂喜乱舞するだろう。
やがて、ほとぼりが冷めた。
残すことに決めた。
やっぱりこれは記念碑なんだ。
でも失敗の記念碑なんかじゃない。
学びの記念碑であり、
勝利の記念碑であり、
勇気の記念碑。
いざ自分が何か失態を犯した時、
そこから逃げ出す卑怯者ではなく、
自分の弱さに直面し、それを受けとめ、
どうやったらそれを成長の糧にできるか、
どうやったらそこで気高いまま踏ん張れるか、
どこまで自分の器を広げられるか、
どうやったら羞恥心の鉱脈で黄金色の栄光を勝ち得られるか、
それを知った戦勝記念碑なのである。
告解2
謝罪メールを送った返信リストの中に、業者と美女は含まれて、、、
いるはずもなく(笑)
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