僕の街には図書館がたくさんある。
その数、我が家から徒歩圏内だけで7館。
ちょっと尋常じゃない数だと思う。
もっとも、周りの人の証言によると、
「徒歩圏内の図書館? せいぜい1〜2館でしょ」
「徒歩で片道50分かかる距離を歩くの、ヒデくんくらいだよ」
というわけで、かなり僕の独りよがりな徒歩圏内らしい。
ともかく、家を出てから東西南北、
どの方角に歩みを進めても、
7つのうち、いずれかの図書館にたどり着く。
繁華街を突っ切っても、
川土手を下っても、
手近な小山に登っても、
そこに図書館がいる。
「いる」のである。
「どうぞお入りなさいな」
という顔をして。
こうして、今日も僕は歩いている。
「歩いている」というのがポイントである。
実のところ、
それとも散策を楽しんでいるのか、甲乙つけがたい。
一番近い図書館だと、自転車を飛ばして2分。
徒歩50分かかる図書館でさえ、車を出して
運良く交差点20カ所をすり抜けられれば、
CDの2曲めが終わる前に到着できる。
そんな距離を、極力アスファルトを回避しつつ、
緑豊かな小道や愉快な脇道へそれながら、遠回りして歩く。
そこが醍醐味なのだ。
足の向くまま、気の向くまま。
時間をかけて歩くことに価値がある。
なぜって?
歩けばあなたにもわかる。
耳を澄ましてごらん。
ゆっくり呼吸してごらん。
そして、心を開いてごらん。
止まっているような退屈な時間の向こう側に、
小さな冒険と魔法が潜んでいる。
風の吐息
鳥たちの音楽
木々の挨拶
水面の合図
花々の微笑
雲の行進
雨粒のダンス
木洩れ陽のキス
それはあまりに小さく、ささやかすぎて、
自転車や車で走り抜けてしまった途端、
魔法は消え失せてしまう。
あなたを満たし、幸せにする秘密の魔法。
それは、あなたが歩いている時にだけ出会える。
(写真/お散歩の合間に)
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