晴れたかと思うと、どんより雲に覆われ、お日様が再び顔を出したかと思うと、雨に見舞われる、まるでネコの瞳のような年の瀬。
そんな本日はタイミングよくお日様に見守られながらの大掃除。
家中の窓拭きを徹底的に済ませ、体があったまってるうちにベランダ中をはいつくばりながら埃という埃、汚れという汚れを一網打尽!
そのまま勢いづいてキッチンを攻略したところで本日はおしまい。
暖冬で過ごしやすかった12月。
と思ってたら、この夕方から急速に冷え込んできました。
明朝には気温1度の予報が!
ブルブルブル。。。
黒猫マックは僕のベッドの中で電気毛布にくるまり、丸くなってます。
これを読んでる皆さんも暖かくして丸まってますように♪
着想
さて昨日の続きです。
先日の公演で発表したもう一つの新曲「Northern Star 〜北極星〜」について、その創作過程を書いていきますね。
クリスマスコンサートというと、王道のクリスマスソングだったり、冬の美しい曲がプログラムに並んでいるわけですよ。
だから、あえて1曲くらい悲哀を感じさせるドラマティックな曲があってもいいなと。
それが新曲作りのスタート地点でした。
音楽制作ソフトProtoolsを立ち上げて、まず作り始めたのがリズムトラック。
何パターンか作ってミックスしてるうちに、枕木の上をガタンゴトン走る列車のようなビートが生まれました。
これだ!と。
そのビートから想起したのが、夜汽車に一人ぽつんと座り、車窓の向こうに広がる暗闇を見つめる主人公像。
彼の胸の内を去来しているのは、孤独感と、なにがしかの葛藤。
やがて彼の視界の中に時折、遠くでかすかに瞬いてる人家の灯りが映る。
そこに彼は慰めと希望を見いだす。
こういう感覚って身に覚えないですか?
僕しょっちゅうです。
夜汽車(夜新幹線?)に乗っていても、夜行バスでも、夜間飛行でも。
イメージと場面設定さえつかめたら、しめたもの。
ほどなくして、この曲の生命線とも言えるメロディーが湧き上がってきました。
揺るぎない美しさをたたえながら。
命名
迷ったのはタイトルなのです。
最初つけた仮タイトルが「Northern Wing(北の翼)」
でも北ウイング(成田空港の北側ターミナル)っていえば、中森明菜さんの楽曲になってしまうではないか(笑)
却下!却下!
ただ、Northernという言葉だけはどうしても残しておきたいなぁ。
厳寒の北国を感じさせる曲だからね。
凍てつくスコットランドとかイメージぴったり。
楽曲で言えばJustified Ancients of Mu Mu(=KLF)「It's Grim Up North」の世界観。
で、ひとまず「Northern Train(北国の列車)」と名付けたのです。
そして本番1週間前。
プログラムのデザインを終え、いよいよ印刷会社に入稿しましょうかね、という段になって、なぜか銀河鉄道のことが頭をよぎったのです。
そこから気持ちが宇宙に向かい、ひらめいたんですね。
そうだ!NORTHERN STAR(北の星=北極星)だ!と。
僕にはひとつの持論があって、
「タイトルさえ決まれば、完成までに必要なアイディアはおのずと集結してくる!」
というのも、タイトルこそ、その曲の魂を表しているからです。
タイトルを命名することは、入魂することと同じなんです。
こうしてタイトルに導かれるようにして、楽曲コンセプトが醸造されていきました。
次章では、それをご紹介していきましょう。
楽曲コンセプト
北極星。
北半球在住の我々にとって、北極星とは天空で唯一動かない星。
かつて方位磁針のなかった時代、旅人が道に迷わぬよう目印にした星。
GPSやナビが発達した現代では、もはや無用なもの。
だけど本当にそうだろうか?
確かに目的地まで「どう行くか」は迷わなくなった。
けれど「どう生きるか」に迷ってる人って、むしろ増えているのでは?
情報の氾濫した社会。多様性に満ちた自由主義社会。
あまりにも選択肢の多い自由すぎる社会だからこそ、権力者に従って働いていれば生活が保障されていた時代とは比較にならないほど、我々ひとりひとりに自主性や先見性が求められる時代。
迷いが生まれる。
戸惑いをかかえる。
疑念を抱く。
やがて、することなすこと八方塞がりになった時。
自分の存在価値を見失った時。
自己不信に陥った時。
頼れる家族、親友、伴侶らと離別し孤立無縁の時。
失望感に打ちのめされた時。
あなたはどうする?
立ち尽くして泣く?
現実から逃避する?
ひとり引きこもる?
現代って、他のどの時代よりも「心の北極星」を必要としている時代ではなかろうか?
心の北極星。
それは何が起きても自分を信じられる力のこと。
どういう境遇に置かれても、純粋な眼差しを持ち続ける勇気のこと。
他人の意見や、世の中で常識とされる価値観に惑わされず、自分の信念に従って歩み続ける豊かさのこと。
完成
こうして楽曲コンセプトが固まり、北国の厳しい大自然を征く列車の力強いイメージが相まって、楽曲制作は快調に進みました。
バックのシークエンスには電子音を多用。通常インストもので使用する倍のトラック数を費やす。
ビートは4グループに分けて、それぞれにレイヤード/ブレイクしながら展開。急行ではなく各駅停車のイメージ。
その分、ファットなシンセベースは白玉でコードをざっくりなぞるにとどめる。
イントロとサビ部分のバックに民族的な音色が欲しくてダルシマーを投入。
サビでは彗星のように夜空に尾を引くシンセパッドでオブリガード。
2コーラス目から二声部の女性コーラスが加わり、3コーラス目で四声部まで拡大した後、処女受胎のごとき高貴の極みまで昇りつめる。
その後の大サビで弦楽オーケストラを従えて交響楽的なクライマックス。
それぞれのサウンドが哀愁の色彩を描き出しながら、ぶつかっては砕け散り、神聖なるブリリアントホワイトな光輝に到達する。
やがてこの曲が生まれたのは偶然ではないことに気づきました。
「Northern Star」は、この2018年に自分が体現したものをトレースしたサウンドトラックだったのです。
そこに鳴り響いていたものは、肉体的な苦しみ、精神的な葛藤、そして霊的な悟りでした。
反響
「CD出てますか? 欲しいんです」
終演後、幾人もの方から声をかけられました。
前夜に完成したばかりの楽曲。
まだ湯気さえ上がってるほど。
初演を無事乗り切れるか、それだけしか意識できない頭に、CD化なんて思いつくはずもありません。
驚いたけど、心底うれしかったです。
実体験に裏打ちされた曲は、人の心にグイっと入っていくんですねぇ。
魂の分身とも言える作品になりました。
以上、今回のブログでは楽曲制作の裏側をドキュメント化してみました。
いつものエッセイ風ブログでは極力控えてきたんですが、今日は専門的なこともいろいろ書きました。
これからはそうしたことも題材にしながら、音楽制作に興味を持ってる読者の方々のお役に立てればいいなぁと思っています。
今後ともご愛読よろしくお願い致します。
あなただけの北極星
どういう状態に追い込まれたとしても、あなたの存在価値は微塵も損なわれることはありません。
ご自身を慈しみ、許しましょう。
揺るぎなく、純粋で豊かなままのあなた自身でいてください。
それこそあなただけが手にしている北極星なのです。
ヒデキマツバラLIVE「A⇄Ω」(アルファ・オメガ)からの動画です。
冬ごもりのお伴にどうぞ。
Hibernation 〜愛の眠り〜 ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara
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