ヒデキマツバラの猫道Blog

音楽、マインドフルネス、それにユーモアを愛するネコ目線のキャットウォークブログ

母が愛した平和大通り - The Road Toward Peace -

 

平和大通り

平和公園を中心点に、広島市街を一直線に横断する、全長4キロ、幅100メートルの大通りだ。

車道と並行して、両側には並木道の遊歩道が続く。

母が愛した、光と緑の道である。

 

 

破壊と復興

1945年夏、原子爆弾の爆心地となり、破壊され尽くした街。

戦後70年は草一本すら生えないと言われた。

 

戦後の復興期、そんな街に前代未聞の大通りを構想した人がいた。

彼の壮大なアイディアは、当時の人々から馬鹿にされ、気狂い呼ばわりされたのだという。

 

でも間違っていたのは人々の方だった。

彼の創造した道のおかげで、草も生えないはずの街に緑と光がよみがえった。

復興のシンボルとなったその通りは、今でも平和へと向かって一直線に伸びている。

 

追憶と未来の狭間

この平和大通りに越してきたのは、父の一周忌を終えてほどなく。

当時、僕はまだ名古屋だったし、高校を卒業したばかりの妹も独り立ち。

 

四人家族での生活から、途端に一人暮らし。

そんな母の慰めになったのが、陽射しと緑にあふれたこの平和大通りだったという。

 

母は光に祝福された平和大通りを愛した。

ちょうど赤毛のアンプリンスエドワード島を愛したように。

 

平和大通りには全国さまざまな県から贈られた樹木が枝葉を伸ばし、四季折々の顔をみせる。

それに魅せられた母は、レッスンの合間や日常の買い物を縫って、平和大通りを逍遙した。

時にはスケッチブックやカメラを持って。

 

緑と光の織りなす安らぎと美しさ。

それを母は切り取り、焼き付けた。

 

父が急死したショックから立ち直りきれていない母にとって、いかばかりの慰めになったであろう。

そして母を亡くしたばかりの僕も今、かつての母と同じことをしてる。

追憶と未来の狭間にある、この平和大通りで。

 

平和大通り讃歌

2004年、夏。 

原爆被爆者追悼のため、母は「ひろしまメモリアルコンサート」を企画、公演した。

そこで新たに書き下ろした歌が「アイラブ平和大通り」であった。

 


I LOVE 平和大通り by ミュージックハウス美美の環 松原リディア美江 ヒデキマツバラ

 

I Love 平和大通り

光る風から届く 花の季節に

ほころび香る 平和大通り

白く揺れる ハナミズキ

希望の明かり 灯すランプ

 

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木洩れ陽の中 深く色を重ねて

ほほえみ交わす 平和大通り

 

香り高き ライラック

愛の言葉で 語りかける

 

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涼風が過ぎ 淡い月影の下

耳をすませる 平和大通り

 

胸に響く 虫の調べ

夢を奏でる シンフォニー

 

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白銀の空 木々は眠りについて

静けさまとう 平和大通り

 

梢わたる 妖精たち

雪の花舞う 星の世界

 

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水をたたえた 川にきらめく光

心うるおす

明日へ続いてる 平和大通り

 

作詞・作曲/松原リディア美江、ヒデキマツバラ

編曲/ヒデキマツバラ

 

涙から生まれた四季

歌の中で描かれているもの。

それは1年の四季、春夏秋冬を通じ、平和大通りが見せてくれる表情や営みである。

 

春にハナミズキ

夏にはライラック

秋には虫の声。

冬には雪の花。

 

そこにある色どりや音、そして香りを五感豊かに描き出した母。

それは日常を彩る幸せのひとコマのようであって、実はそうではない。

 

なぜなら我々が享受している平和や幸せは、多くの尊い御霊による犠牲の上にあるから。

そう、涙の街であるこの広島の地では、かつて花が一輪咲くだけでも奇跡だったのだ。

 

種を蒔く。

芽が出る。

蕾が膨らむ。

花が咲く。

実がなる。

 

75年前、そうした生命の営みが、この被爆地でかなえられると一体誰が想像できたであろう。

でもすべては人間の想像力を超えていた。

緑豊かなこの街の奇跡は、幸せと平和を願う人々の心が結実したからにほかならない。

 

だからこそ母が「アイラブ平和大通り」の中に描いたものも同様、単なる喜びや幸福感では終わらない。

そこで歌われているのは、涙の中から生まれた希望なのである。

 

望みの種

先日、母の告別式でこの歌を一同で歌ったところ

「これは美美の環の歌じゃなくて、広島の歌にすべきだよ、絶対に!」

そう言って参列者から力強い励ましをいただいた。

 

どうすればそんな大それたことが可能になるのか、今の僕にはわからない。

でも始まりってそういうものだと思う。

 

広島という街の復興、平和大通りの構想、すべては理想の種をまくところから始まった。

簡単なことではないけれど、望みが萌芽し、人の心に届くまで歌い続けていきたい。

 

f:id:hidekimatsubara:20200221153740j:plainDJヒデキマツバラ presents カクテルパーティー
GODSPEED 

【Date】2020-03-15(Sun)14:00 - 15:50
【Place】Miminowa Music Studio
【Admission】 ¥2750 (with Special Cocktails & Spring Tapas)
【Performance】DJヒデキマツバラ、MAYUMI、SAM、エセニヤ
【Reservation】ヒデキマツバラTwitterまでご連絡ください(2020/03/08ご予約〆切)