梅雨空の合間にのぞいた爽やかな青空。
すっきりヘアカットしてきました。
このCDコレクションのうち、ボーカル作品の99.9%を占めているのが女性ボーカル。
はい、女性の歌声が大好きなんです!
一方、男性ボーカルものは、わずか0.1%。
えぇ、男性の歌声って苦手で。。。
購入に至った理由も、声ではなくサウンドに惹かれたっていうのばかりで^^;
そんな僕が、初めて男性ボーカルに魅力を覚えました。
それが和弥の歌声だったのです。
和弥との経緯はこちらで。
hidekimatsubara.hatenablog.com
こもれびの歌声
僕がサウンドプロデュースを担当した和弥の「こもれび」
YouTubeで公開されました。
是非、和弥の美声をお聴きください!
こもれび(作詞・作曲/コリ和弥 編曲/ヒデキマツバラ)
「コリ」は和弥のハンドルネーム。
混在すると紛らわしいから、ここ猫道では「コリ和弥」としておきました^^
今日はこの歌のレコーディングにまつわるエピソードを綴りながら、録音エンジニアの必要とされる資質についても触れて参りましょう。
レコーディングエンジニアの人間力
「こもれび」聴いてるとホレボレしますね〜。
和弥の伸びやかなハイトーンボーカル。
実を言えば、レコーディング当日の朝、和弥の歌声はメタメタでした。
彼なりにウォームアップして栄養もつけてきたのだけど、まだ声が起きていない状態。
レコーディング初体験の緊張感も相まって、録音序盤は当人も驚くくらい絶不調だったのです。
そこをカバーするのが、録音エンジニアの役目。
そもそもレコーディングは、ボーカリストひとりが頑張っても成り立ちません。
あくまでも、録る側と、録られる側とのコラボ。
両者がベストを尽くすことで、良いテイクが生まれるんです。
そこで録音エンジニア側に必要とされるのが人間力。
どうすれば相手をリラックスさせられるか。
どうすれば相手に自信をつけさせられるか。
どうすれば相手からベストパフォーマンスが引き出せるか。
そこを最優先に考えます。
和弥のレコーディングでは「ちょっと軽く歌ってみようか」で始めました。
「まだ録らないから、自由にどんどん歌ってみて」
そう言って和弥を安心させつつ、良いテイクが録れた場合に備えて、こちらは常に録音モード(笑)
何よりも避けたいのは、ボーカリストが自信を喪失してしまうこと。
録り直しでテイク数が増えていくと、どうしても空回りして来るものです。
それで焦って力んで自信まで失くされては、良いテイクを録れる望みもついえますからね。
そこで相手の気持ちをそらすため、こちらは手を変え品を変え、あらゆる手段を試みます。
「ちょっと目を閉じて歌ってみようか」と助言してみたり。
「一回ヘッドホン外してストレッチしてみようか」「お水飲んでいいよ」など、間を置くことで肩の力を抜いてもらったり。(*くれぐれも水の温度は常温で!)
歌声が不調な要因を「マイクの位置が悪かったのかも」などと別の理由にすり替えて、小道具を微調整するフリをしてみたり。(役者やな〜笑)
もちろん、こちらはこちらでレコーディングの技術的な作業で手一杯(>_<)
なのですが、そこを相手に悟られず円滑に進めていくフリをするのも、録音エンジニアの人間力!
頭の中では数値や設定が飛び交うも、口では「お〜、その歌い方セクシー!」と相手を持ち上げることも忘れません^^
どんなウソも許せない!って女性多いですけど、そんなこと言われたら僕はお手上げです。
ウソも方便。
良い声を録るためなら、僕は何だってやります!(笑)
蜜月関係
不思議なもので、音楽という形のないものを形にするために、二人きりでずっと密にレコーディングしてると、独特な関係に陥ります。
初めてのCD制作で、僕が録られる側だった時もそうでした。
エンジニアとアーティストの間に、まるで「戦友」のごとき深い友情が育まれていくんです。
体感温度というか熱量が同じなんですよね。
それはきっと
① 「良い作品にしたい」という絶対的な命題の下
② 狭い空間で
③ 長時間を共有しながら
④ お互いに全幅の信頼をおいて
⑤ 熱意を燃やしながら
⑤ 各々のベストを出し尽くす
からでしょうね。
僕が感心したのは、和弥自身、歌うことに対して明確なビジョンを持っていたこと。
こういう風に歌いたい、こういう風に聞かせたい、っていうね。
そうやって自身を客観視できているボーカリストだと、僕もすごく仕事がやりやすい。
レコーディング中盤、和弥本来の歌声が復活すると、何かにつけて僕らは笑いっぱなしでした。
ここはコメディー劇場か!?ってほど。
戦友同士で通じ合える空気感と笑いが、スタジオにひしめいていました。
パワーを奪う悔しさ、パワーを与える悔しさ
こうなると、もう気遣いは無用。
和弥が歌詞やタイミングをミスっても、映画やドラマのNGシーンのように二人で笑いあうばかり。
「クッソ〜! くやし〜!」と漏らす和弥の口元も、ほころんでいたり。
それはもう「自分らしいパフォーマンスが出せない悔しさ」ではなく「もっと良いパフォーマンスができたのに!っていう悔しさ」なんですよね。
前者の悔しさは、自己否定してパワーを奪ってしまうネガティブな悔しさ。
後者の悔しさは、もっとやれる!っていう自己信頼パワーを与えてくれるポジティブな悔しさ。
そんな調子でレコーディングを終えたところ、和弥は食い下がってきました。
「前半部分を録り直しさせてください! 今ならもっと良く歌えます!」
ク〜、この根性がいいよね。
なんてったって戦友ですもの。
僕まで同じ熱意で「よし! 録り直してみよ!」
こうして完成したのが、お聴きいただいてる「こもれび」です。
レコーディングを通じて、戦友の成長ぶりを目の当たりにした僕でした。
デキる男の条件
クシャクシャに笑う和弥。
悔しさに顔を歪める和弥。
脱力してうなだれる和弥。
本当に表情豊かなヤツです。
もし僕が映画監督だったら、和弥を俳優としてスカウトしちゃいます!
今の時代、これほど全身で気持ちを表現できるヤツも珍しい。
まるで、生きて動くLINEスタンプ(笑)
そんな和弥は、ある人を思い出させました。
たっくん!
1コ上のいとこ。
子供時代、一番の遊び相手でした。
和弥の顔つき、物腰、感情表現が、ことごとく「たっくん」とカブります。
おまけに和弥は気分が高ぶると無意識のうちに方言が混じるんだけど、それがまさしくたっくんが育った地方の方言。
こうなると僕はもう、お仕事でレコーディングしてるんだか、たっくんと遊んでいるんだか、定かでありません(笑)
音楽を通じて和弥と共有している時間と空間を、目一杯楽しんじゃいました^^
特にこのところ母の介護と死で、笑うどころじゃない日々が続いてたので(T_T)
これほど愉快な思いをしたのは、この1年半で初めてのことでした。
あまりに愉快で「レコーディング風景をビデオ撮影しておけば良かったかもね」と僕が言えば、
「あー、ホントそうですね! それをYouTubeで公開するとかできたのに。そんなことも気づけないから、自分はまだまだダメなんですよねぇ」と和弥。
それぐらい和弥にとっても楽しい1日だったのだとか。
僕には座右の銘があります。
「本当にデキる男は、遊びの中で学び、仕事の中で遊ぶ」
まさしくそれを体現できた、最高のレコーディングでした。
■今月のライブ動画■
雨のニューヨークにインスパイアされた哀愁ハウス「ブルー・マンハッタン」をアップしました!