ヒデキマツバラの猫道Blog

ドラネコ視点の少し風変わりな猫道(キャットウォーク)ブログ

孤独な負け犬たちの聖地 〜オリジナルソング「Blue Manhattan」制作秘話〜 - Sanctuary for Broken Dreams -

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ヒデキマツバラLIVE「Made in Sanctuary」より

 

イエローキャブ、摩天楼、JFK

━━世界の中心地ニューヨークの象徴

 

僕の人生で第二の故郷とも言える街、ニューヨーク。

そこを舞台にして、映画の一幕のようにドラマティックな歌を作ろう。

 

そうして誕生したのが「ブルー・マンハッタン」

今日は制作裏話を交えつつ、この歌に内包した声なき声についても述べていこう。

 

  

蒼きマンハッタン


BLUE MANHATTAN ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara

 

Down, down, down, down, down, down, down, down

Down, down, down, down, down, down, down, down

 

雨に消えたイエローキャブ

滲む街よ

遠ざかってゆく摩天楼

ハート残し

 

見上げた頬

雨が降る

 

Down, down, down, down, down, down, down, down

Down, down, down, down, down, down, down, down

 

夜明け前のJFK

蒼いシルエット

夢が咲いて 風に散って

天空の彼方

 

瞳閉じて

雨が降る

 

Down, down, down, down, down, down, down, down

Down, down, down, down, down, down, down, down

Down, down, down, down, down, down, down, down

Rain falling down

Down, down, down, down, down, down, down, down

Rain falling down

 

Down, down, down, down, down, down, down, down

Down, down, down, down, down, down, down, down

Down, down, down, down, down, down, down, down

Rain falling down

Down, down, down, down, down, down, down, down

Rain falling down

 

作詞・作曲・編曲/ヒデキマツバラ

 

偉大なる負け犬の歌

アメリカンドリームの象徴ニューヨーク。

夢見る多くの若者たちが、世界中から集まる。

 

と同時に、夢破れ、ひっそり去っていく若者も数知れず。

ニューヨークの玄関口、JFK(ジョン・F・ケネディー国際空港)は、挫折した者たちの退出口でもあるのだ。

 

ニューヨーク名物のイエローキャブ(ニューヨークの名物タクシー)や居並ぶ摩天楼に別れを告げて、空の彼方へ散っていく者たち。

そんな彼らのことを歌ったのが「ブルー・マンハッタン」

 

この歌は、いわばLoser(負け犬)の歌。

ただし「負け犬」とは、すなわち「勝負に出て負けた者」のこと。

 

それは「勝負に出ることもできない者」あるいは「勝負から逃げた者」とは違う。 

堂々と負けたのだから、そこに「哀しみ」はあれど「後悔」はない。

「負け犬」とは「勝者の次に偉大な者」のことだから。

 

孤独な者たちの聖地

夢破れた者が、その嘆きや悲しみを誰とも共有することなく、一人でマンハッタンを去っていく。

そんな歌を編曲していく際、安直にバラード作品へとアレンジしてしまうのはナンセンスだと感じた。

 

共有されない悲しみというものは、むしろダンスサウンドがふさわしい

なぜならダンスフロアは孤独な者たちが集う聖地だから。

 

何万人ものクラバーが拳を振り上げながら、涙の中で踊り狂う。

そんなアンセム級のハウスサウンドこそ、この歌がまとう衣装にふさわしい。

 

ニューヨークのVIP御用達の超巨大クラブ「トンネルズ」

かつてそこで体感した空母のような超ド級のダンスサウンドが僕の血潮を駆け巡った。

 

冷たい熱気、熱い冷気

ブルー(憂鬱)なマンハッタンを彩るハウスサウンド

それを追い求めてシンセサイザーに向かえば向かうほど、出てくるサウンドは相矛盾した心象風景を描いていった。

 

硬質なビートは、冷めた心拍音を大空間に刻む。

一方、骨太なベースラインは、ラテン系カーニバルのごとく白熱しながらオクターブで弾みまくる。

 

雨に滲んだピアノの音色は、心を鎮めるように天から静かに降りかかる。

一方、土砂降りの弦楽ストリングスは、何もかも振り払うように容赦なく大地を打ちたてる。

 

Am7━FmM7━G7━Dm7を延々とループする循環コードは、もがく主人公の行き場のない気持ちを代弁している。

一方、スピード感を増していくサウンドは、マンハッタンからJFK国際空港へのハイウェイを疾走している。

 

静かに傷心を奏でると同時に、お祭り騒ぎのように煽り立てるサウンド

そこでは絶えず冷気と熱気がぶつかり合い、媚薬のような効果をもたらす。

情熱を秘めた青い炎が、くすぶりながら踊り上がるように。

 

あなたが夢破れた時。

あなたが独りで涙を流す時。

あなたがノックダウンされた時。

「ブルー・マンハッタン」は、あなただけの歌となる。

 

 

■ヒデキマツバラ最新プロデュース作■

こもれび(作詞・作曲/コリ和弥 編曲/ヒデキマツバラ)


こもれび