ヒデキマツバラの猫道Blog

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恋に破れた男心を奏でたサウンド 〜「こもれび (by和弥)」Part2 サウンドプロダクツの全貌〜 - The Sound of A Broken Heart-

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ヒデキマツバラプロデュース作「こもれび」by和弥

和弥の6年に及ぶ片想いが破綻して生まれた作品。

その壮絶なストーリーは前回書いた通り。

 

hidekimatsubara.hatenablog.com

 

「こもれび」のサウンドをクリエイトしていくことは、僕にとって興奮の連続だった。

創作意欲を掻き立てられる和弥の歌声と、僕の魔法じみたアイディアがクロスしていく。

 

歌ものを編曲していく上で、とりわけ重要なカギを握っているのは歌詞だ。

言葉を手掛かりにしながら、サウンドを駆使して歌詞の世界観を視覚化・映像化していく。

そこがサウンドクリエイターとして腕の振るいどころ。

 

そこで今日は「こもれび」サウンドプロダクションの全貌をあますところなく解剖していこう。

 

 

知れば知るほど 君に惹かれていった日々

こもれび(作詞・作曲/コリ和弥 編曲/ヒデキマツバラ)


こもれび

 

Ah きみの前じゃ

得意のおしゃべりも ままならないから

せめて ぼくの気持ちを 伝えるために

このうたを きみに贈るよ 

 

もし 僕が神なら

世界を滅ぼすかもしれない Mmm

変わらない笑顔 変わらないやさしさ

たったひとつだけ変わったのは

もう きみのとなりには

他の誰かが... いるってこと

 

はじめて会った衝撃は銃弾

世界から音と視線を奪い

知れば知るほど きみに惹かれて

いつものように からまわって

おこがましいのは百も承知

それでも贈りたい

モブからヒロインへラブソング

 

わすれたいよ それで前に進めるのなら

わすれないよ きみが溢れて輝いていた日々

何ひとつ持ってはいないぼくの

武器はこの気持ちだけ

 

いつか このうたに続きができたら

ハッピーエンドでおわって欲しい

I wanna make you mine

I wanna make you mine

 

さようならは できれば言いたくはないけど

ありがとうは 何万回でも言い足りなくて

何ひとつ持ってはいないぼくの

武器は ただこの気持ちだけ

Ah ありがと

ありがとう

 

あぁ 君の前じゃ

サウンドクリエイターとしての出発点。

それは「どうすれば恋に破れた男心をサウンド化できるか?」だった。

 

バラード調で始まる導入部の歌い出し。

バックはエレピ一本。

 

失恋の切なさ、若いが故の甘酸っぱさ。

それらを抽出するため、ひねりの効いたテンションコードを多用した。

 

間奏

スローなR&B調のリズムが寄り添っていく。

リード音には、ガラスのように繊細なサウンドをチョイス。

 

もし僕が神なら

「もし僕が神なら世界を滅ぼすかもしれない」

失恋したあの夜のことを歌った、衝撃的なフレーズ。

が、人畜無害な和弥のことだから、破壊的な感情の矛先は世界ではなく自分自身に向けられる。

 

そこでこのAメロ部分では、人間界を超えた天界っぽい雰囲気の音響空間に仕立て、砕けた和弥のハートを悼んだ。

玉のように弾んでゆくフレーズは、和弥が流した心の涙。

 

特筆すべき点として、このAメロには音楽の専門家しか気づくことのできないカラクリを仕込んだ。

「変わらない笑顔 変わらないやさしさ」の箇所は、ベースラインもオンベースのF(ファ)で維持したまま、文字通り変化させていない。

その直後「たったひとつだけ変わったのは」から一転して、コードもベースラインもめまぐるしく変化させた。

「変わらない/変わった」という歌詞を、コード進行の展開とシンクロさせた異色の職人技だ。

 

はじめて会った衝撃は銃弾

Bメロで歌われるのは、銃弾に例えられた衝撃的な彼女との出会い。

そこから、めくるめく恋の螺旋に堕ちて、引き込まれていく和弥。

 

それを音像化するために、F-G-Em-Fの循環コードと、ハープのアルペジオ、という二段構えで、メビウスのようなループ感を表現。

脆いガラスのような音色の和音は、和弥の傷心を表す。

 

個人的に、このBメロのスイングがかった和弥の歌い方が好きでたまらない!(>▽<)

和弥が先天的にリズム感抜群なのは、幼い頃から培ったダイナミックな舞踊表現力の賜物だろう。

 

わすれたいよ それで前に進めるのなら

「わすれたいよ」「わすれないよ」

サビ部分で初めて本音を吐露する和弥。

 

忘れたいけど、忘れたくない。

そんな男心の葛藤で、砕け散るガラスのハート。

 

荒削りなまでに不器用で、一途すぎる和弥の気持ち。

それを代弁できる楽器編成は何か?

もちろん、男っぽいロックなブレイクビートとエレキギターしかないだろ!

 

ところで和弥の歌声を聴いてると、悲しい歌詞とは裏腹に、雨上がりの青空にかかった虹が見えてくるのは僕だけだろうか?

そこで、高高度をゆく飛行機のようなキーンという高域サウンドや、キラキラ反射するデジタルサウンドも投入した。

 

いつか このうたに続きができたら

「I wanna make you mine(君を僕のものにしたい)」

このブリッジ部分でついに未練を口にする和弥。

 

ここでも循環コードをループさせながら、彼女の面影から抜け出せない和弥の心境を浮かび上がらせた。

 

揺さぶられた心を奏でるのは、重厚な弦楽ストリングス。

と同時に、弦楽のスタッカートが鋭く連打し、和弥の胸の内のアラート音のように鳴り響きながら、クライマックスへと橋渡しする。

 

さようならは できれば

鮮やかに転調したクライマックス。

和弥の歌声は、もはや悲鳴に近い。

その音域たるや、男性ボーカルとしては驚異的。

最後「ありがとう」歌い終わり寸前で、上ずる声がたまらなくセクシー!

 

バッキングのサウンドは、まさしく冒頭画像のようなイメージで制作。

ライブで言えば、ドラマーやギタリスト達が汗を巻き散らしながら全身全霊でプレイしているあの感じ。

 

余談だが、僕はプログラミングの際でも、プレイヤー達が奏でるであろうリアルな熱気を大事にしているため、必然的にギターやバイオリン、ドラムなどかき鳴らす仕草をしながら、立ちっぱなしでパソコンに向かって作業している(笑)

ハタから見ると、ヘッドホンを装着して無音の中、髪を振り乱しながらエアギターをかき鳴らす僕はかなり異様に映るらしい^^;

 

コーダ部分は、数種類ほどバリエーションを用意した。

夕日のように消え入るもの、凝ったもの、ドラマティックなもの等。

ただ、和弥が潔く彼女から手を引いたのと同様、ここは男らしく締めたい。

で、ストレートなエンディングに。

 

「どうすれば恋に破れた男心をサウンド化できるか?」

そこから出発した僕が、サウンドクリエイターとして目指した最終地点は

「大失恋ソングなのだけど、聴き終えた後に、まるで炭酸ソーダ水のような清涼感をもたらす歌」であった。

あなたにもシュワっと味わっていただければいいな。

 

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