お盆休暇2日目でした。
その日も午後からお墓参りへ行くことに。
そうそう、車を出す前に、ひとつ用事を済ませることにしましょうかと。
神棚用に新しいサカキを求め、近所の花屋へ足を向けます。
セミの合唱を縫っていくと、白衣姿の女性が花屋をたたんでいるではありませんか。
「あのおっ! もう終わりですか?」
自転車に乗って立ち去ろうとするその店員を、急いで呼び止めました。
「何かお求めですか?」
目鼻立ちのきれいな女性店員が、愛想よく振り向きます。
「サカキが欲しいんですけど」
「では中にどうぞ」
店員さんはサササッと店を開けると、スススッと奥へ入って行きます。
広い店内はクーラーを消してまだ間がないようで、心地よい冷気が漂っていました。
「ごめんなさいね、真っ暗で」
奥から声がして、電気がつきます。
「ごめんなさいね、音楽もかけなくて」
奥から声がして、ラジオがつきます。
その時、ふと僕の目に入ったのがカレンダー。
見ると、その日からこの花屋さん、お盆休暇に入っているではありませんか。
ごめんなさいを言うべきなのは僕の方でした!
「いえ、こちらこそお休みのところ、わざわざ開けていただいてすみません」
店の奥に向かって声を上げます。
「ごめんなさいね、お待たせして」
店員さんが、包んだサカキを手に現れます。
「いえ、こちらこそお手間かけてしまって」
こうして、ちょっとしたごめんね合戦を繰り返しながら、店員さんとお店を出ました。
「ちょうど良いタイミングでいらっしゃいましたね」
最後に店員さんはそう言って、太陽のようにニッコリ笑います。
そして颯爽と自転車に乗ると、夏風のように去って行きました。
◾️アーカイブ音源◾️
ブルー・プラネット、地球をテーマにした美麗ダンストラック
PLANET EARTH ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara
◾️今月のライブ動画◾️
夏色全開のオリジナルソング「サーフボード」