前回記事「神話の花園にて」からの続きです。
日本脱出
ミュージカル公演「ギリシア神話」本番まであと2ヶ月。
肝心のテーマ曲「バラの谷エンナ」を1小節すら書けず苦心していた頃。
日本を離れる前に、楽曲をある程度形にしておきたかったな。
後ろ髪引かれながら、旅行カバンに忍ばせた作詞ノート。
もしかしたら日本を離れることで、何かインスピレーションが得られるかも。
ニューヨーク、ワシントンDC、フロリダを巡る2週間の旅。
ブロードウェイのミュージカル俳優と個人的に語り合えたり、9.11グランドゼロへ慰霊に訪れたニューヨーク。
テロで厳戒態勢のスミソニアン博物館(宇宙博物館や自然史恐竜博物館)を巡ったワシントンDC。
そして義理の祖母ミルドレッドおばあちゃんとジョイスおばさん宅に身を寄せたフロリダ。
このアメリカ旅行を通じて、僕は次の句を心の底から信じる機会に恵まれました。
「求めよ、さらば与えられん」
秘密の花園
アメリカ滞在最終日のことでした。
フロリダを満喫させてくれたジョイスおばさんが、最後に連れて行ってくれたのが一軒の花屋さん。
いえ、園芸アトラクションショップと言ったほうがいいでしょうか。
というのも、そのショップの裏には大庭園が広がっていましたから。
それはもう学校のグランドほどもある広大な敷地で、ハイキングコースまで設けられていました。
買い物客はそこをぐるりと一巡しながら、品定めをするのです。
さすが圧巻のアメリカンスケール!
それは美しい庭園でした。
整備の行き届いたヨーロッパ調の庭園と違い、自然をそのまま移植したような素朴な美しさ。
絵本作家で園芸家だった故・ターシャ・チューダーさんの庭のようでした。
そこここに咲き誇る花々の茂み、どっしり根を張った大木、小川のせせらぎ。
歩を進めるたび、何か驚きと喜びが待っています。
ガイドブックにも載っていないその庭園。
僕だけの秘密の花園でした。
デルタ航空 アトランタ発
翌朝フロリダを離れ、ハブ空港のアトランタへ飛び、帰国の途に。
離陸後、早めの機内ディナーを済ませた僕の胸の内には、あの大庭園の感動がみなぎっていました。
そこで素晴らしいアイディアを得たのでした。
あの大庭園をイメージしながら「バラの谷エンナ」を作ってみよう!
すごい曲を作る秘訣は一つ。
非現実の中に身を置くこと。
夜明けを目指して太平洋を横断する飛行機の中こそ、格好の非現実空間です。
就寝についた乗客たちをよそに、僕は曲作りに取り掛かります。
するとどうでしょう。
ものの数十秒で、冒頭のメロディーが完成しました!
「バラの谷エンナ 美しいエンナ」
歌詞とメロディーの一体感ときたら!
これ以上ふさわしいコンビネーションはあり得ません。
切り口となる楽曲モチーフを手に入れた僕は、水を得た魚のように続きのメロディーを発展させていきました。
こうして太平洋上空のフライトで一晩中、曲づくりに夢中になった僕が、最高の気持ちで成田の地を踏みしめたのは言うまでもありません。
それがこちらの作品です。
バラの谷エンナ(ミュージカル「ギリシア神話 〜デメテルとペルセポネ〜」より)ミュージックハウス美美の環/松原リディア美江/ヒデキマツバラ
バラの谷エンナ
バラの谷 エンナ 美しいエンナ
小鳥のさえずり 森を包み
甘い花の 香り放ち 妖精を誘う
陽だまりの羊は 夢うつつまどろむ
喜びと祈りを胸に
西風のメロディ 木洩れ陽のレース
泉のつぶやき 遠く近くこだまして
優しく地球(ほし)に語りかけている
誰も皆 心に楽園が広がる
そう 愛という名の恵み
花は枯れてゆき 土に還るけど
(その種は 息づいて)
巡りくる季節 告げる光
(やがて)
雪溶けの予感に
明日の蕾が膨らむ
時は地球(ほし)の想い 刻みながら
永遠に神話 紡いでゆく
バラの谷 エンナ 美しいエンナ
作詞/松原リディア美江、ヒデキマツバラ
作曲・編曲/ヒデキマツバラ
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Ferry Corsten - Ligaya (Hideki Matsubara Remix) Gouryella ヒデキマツバラ
◾️ヒデキマツバラ音源作品◾️
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TAKE OFF ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara