前回記事に続いて、オリジナルソング『ミスティーク』制作の裏話を書いていきます。
前回記事はこちら。
- 3本のキャンドルと4つのモチーフ - Three Candles & Four Motifs -
- 言葉という生命体 - Consciousness of Words -
- 王妃シェヘラザードに捧げるラブソング - Love Song For Scheherazade -
- 女神イシュタルの詩心 - Pagan Poetry -
3本のキャンドルと4つのモチーフ - Three Candles & Four Motifs -
3本のキャンドルが放つ、異国の香りの中に秘められた物語。
人間の言葉ではないその物語を、どうやって歌にしていくか?
手がかりとして、僕は4つのテーマに行き着きました。
千夜一夜物語 - Arabian Nights -
アラビアンナイトの中で最重要人物といえば、すべての物語の語り手である王妃シェヘラザードでしょう。
アラビアンナイトの始まりは、ペルシア国王の女性憎悪からでした。
最初の王妃に不貞を働かれて女性不信に陥った国王は、夜な夜な町の女性を王宮の寝床に招き入れては肉体関係を持ち、朝になると相手の首をはねて殺す事で、女性への復讐を遂げていました。
しかしシェヘラザードは一夜ごとに命がけで面白い話を語り聞かせ、王の信頼を勝ち得たのです。
ちなみにシェヘラザードとは「領せる地の麗しき女」の意。
世界の七不思議 - Seven Wonders of The World -
新バビロニア帝国の首都バビロンには、世界七不思議の1つとされる空中庭園がありました。
砂漠を嫌った王妃アミュティスのために、国王ネブカドネザル2世が建設したとされます。
古代土木建築の偉業とされ、高さ25m(ビル8階に相当)に及ぶ五層の階段状テラスまで水を汲み上げ、樹木や花で覆ったと言われています。
バビロンの城壁 - Gate of The Gods -
首都バビロンでは、巨大な城壁がめぐらされていました。
全長は数十kmに及び、高さ90m(30階ビル級!)厚さ24m、100の門と、250の塔を持ち、かつては世界の七不思議に加えられていたほどです。
城壁で最も有名な門がイシュタル*門。
*イシュタル…「金星」「女神アフロディーテ」の意
バビロン捕囚 - Babylonian Exile -
紀元前597年、エルサレムに侵攻した新バビロニア帝国のネブカドネザル2世は、ユダ王国を征服して滅ぼしました。
以後20年間で、ユダヤ人(=ヘブライ人、エルサレムの民)3000人を捕虜としてバビロニアに強制移住させます。
彼らは救世主(メシア)の登場を期待したものの、長く苦しい捕囚生活が続きました。
半世紀後、世代を経て20万人に達した彼らをバビロンから解放したのは、待望のメシアではなく、異民族であるアケメネス朝ペルシアの王キュロス2世でした。
バビロン捕囚がきっかけでアイデンティティーを確立したユダヤ人は、帰国後に旧約聖書を編纂、ユダヤ教が誕生することになります。
言葉という生命体 - Consciousness of Words -
いい歌を作るコツは、ソングライティングよりも取材に時間をかける事。
この『ミスティーク』制作では、先述した4つののテーマに関して入念な下調べをするのに2ヶ月以上費やしました。
それだけ潤沢に時間をかければ、作詞する前からもう作詞ノートには様々なフレーズが踊っています。
通常の制作プロセスだと、そこから主人公像を練り上げたり、物語の舞台設定やプロットの設定に入りますが、この作品ではその工程すら不要でした。
というのも、まるで言葉同士が意識を持った生命体のように、ひとりでに融合していったからです。
そこには、取材の中から抽出された感情同士がせめぎあっていました。
その感情とは、愛と憎しみ、痛みと安らぎです。
最初にできたフレーズが「その吐息 バビロンの風」でした。
そこからは本当に早くて、見る間に歌詞とメロディーが完成しました。
ストーリーやコンセプトさえできていないうちに!
王妃シェヘラザードに捧げるラブソング - Love Song For Scheherazade -
こうしてケムにでも巻かれたように仕上がった『ミスティーク』
完成から10年経った今になって発見した事があります。
ここで歌われている女性とは、一体誰なのか?
その女性とは、
バビロンの風の如き吐息を持ち、
サフランの園の如き香りがして、
イシュタルの詩の如き瞳を持ち、
サントゥール*の音の如き鼓動がする。
*サントゥール…ピアノの原型となったペルシア発祥の打弦楽器
これらを併(あわ)せ持った女性。
それは、ほかならぬシェヘラザードではないでしょうか!
女神イシュタルの詩心 - Pagan Poetry -
シェヘラザードに捧げたラブソング。
そんな視点から、今一度『ミスティーク』を鑑賞してみてください。
MYSTIQUE ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara
MYSTIQUE
その吐息 バビロンの風
その香り サフランの園
朽ちたアイコン葬って
あなたの腕をとる
Open your heart
囚われた愛の日々
封印解いて その手で
その瞳 イシュタルの詩
その鼓動 サントゥールの音
胸のロザリオ引きちぎり
あなたに口づける
Open your heart
痛みさえ麗しき
魅惑のめまいに 溺れて
Open your heart
千夜に一夜もの
情熱とかして 燃え立つ
Behind your face
Behind your mind
Get closer
Go deeper
Open your heart
作詞・作曲・編曲/ヒデキマツバラ
(さらに次回へ続く)
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