ヒデキマツバラの猫道Blog

音楽、マインドフルネス、それにユーモアを愛するネコ目線のキャットウォークブログ

ポーカー女史の失態(前編) - Mrs. Pokerface Went Wrong (Pt.1) -

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こちらが微笑むと、相手も鏡のように微笑んでくれる。

この惑星は、笑顔で回っているから。

 

 

笑顔は人と人をつなぐ - Smile Makes The World Go Round -

僕はどんな人にも平等に、笑顔で接してきました。

それは、会う人すべてに対して、ある種の友情というか、仲間意識のようなものを感じているからなのかもしれません。

 

日常生活はもちろん、仕事現場でも微笑みを絶やすことはありません。

一筋縄ではいかないレッスン生も、笑顔で接していくうち、次第に心を開いてくれるようになります。

 

生まれる前に、笑顔を母親の胎内に忘れてきたんじゃないの?と思えるようなピアノ男子でも。

虫歯の治療を怠ってるの?と思うほど、眉間に皺の寄った熟年レッスン生でも。

笑顔を通じて、友のような関係を築いてきました。

 

そんな僕にも、ただひとりだけ、心を通い合わすことのできない人物がいたのです。

 

ポーカーフェイス宣言 - Mrs. Pokerface -

その人物とは、カルチャースクール受付の新顔。

常に表情を崩さず、事務的に粛々と業務をこなすその女性は、こちらが胸襟を開こうとしても取りつくシマがありません。

不要なコミュニケーションはお断りですよ!というオーラを発しています。

 

僕は寛大な気持ちでいました。

新規採用されたばかりのスタッフは、覚えないといけない仕事量の多さにてんてこ舞いですからね。

そのうち彼女も、笑顔で応対するゆとりが出てくるだろう、と。

 

ところが彼女に限って、そうは問屋が卸しません。

一向に無表情な彼女の前で、ニコニコ愛想を振りまく自分が、バカみたいに思えてきます。 

 

まるで「私はポーカーフェイスで生きるために生まれた女よ」と宣言しているかのよう。

そんな彼女のことを、僕は心密かに「ポーカー女史」と名付けました。

 

笑顔を封印した日 - Sealed Smile -

ポーカー女史の受付に当たってしまった日。

それは、まるで外れクジを引いた気分です。

 

幸いなことに、彼女の仕事ぶりは有能でした。

相手の長所をひとつでも見つけなければ気が済まない僕は、それで満足するほかありません。

 

共に仲間意識を共有して、カルチャースクールをより豊かな空間にしたい。

そんな僕の純粋な気持ちも、ポーカー女史にとっては余計なお節介に過ぎないのだ。

ポーカー女史が100近くもある講座の管理を的確にこなしているのであれば、僕はそれ以上を望むべきでない。

 

そう言って自分を納得させようとするうち、僕の顔から笑いが消えました。

そして彼女に対して、僕もポーカーフェイスを装うようになってしまったのです。

 

ポーカー女史からの電話 - Telephone Call From Mrs. P -

ある日、ポーカー女史から電話がかかってきました。

僕のピアノクラスに、体験レッスンの予約が入ったとの連絡です。

 

頭の切れるポーカー女史は、僕の必要とする情報を惜しげなく与えてくれました。

「受講される方は女性で、これまでピアノを習った経験はなく、楽譜もないので、選曲はマツバラ先生にお任せされるとのことです」

 

ひとつだけ、ポーカー女史が見落としているポイントを、僕から確認してみます。

「その方のご年齢は、だいたいどのくらいですか?」

 

するとポーカー女史は、僕の知る限り初めて、言葉に詰まりました。

「。。。すみません、それは伺っておりませんでした。。。」

 

僕は少し穏やかな気持ちになり、よそよそしさを脱ぎ捨てた声で問いかけました。

「ざっくりでいいので、相手の声色から、なんとなく年代がご想像できますか?」

 

するとポーカー女史曰く、

「そうですね、年代はけっこう上でした。ご高齢とまではいかないですけど」

 

そこで僕は、50〜60代の受講生だとあたりをつけました。

熟年向けの教材を選曲すればいいんだな。

 

体験レッスン生の正体 - The Third One -

体験レッスンの日、受付を担当していたのは、またしてもポーカー女史。

10人も受付スタッフがいるというのに、つくづく縁があるものです。

 

「自分の好きなものだけでなく、嫌いなものまで同様に引き寄せられる」

引き寄せの法則が脳裏をよぎります。

僕は心の中でため息をつくと、いつも通り無表情で生徒名簿を受け取りました。

 

体験レッスン時刻が来て、教室の扉を開け、直前のレッスンの女の子を見送った僕は、通路を見渡しました。

すると、目の前のソファーに腰掛けながら、読書に勤(いそ)しむ中高年女性が目につきました。

あの人だな。

 

体験レッスンでは、受付スタッフが受講者を教室へ誘導することになっています。

ちょうどポーカー女史がこちらへやってきました。

 

「マツバラ先生、本日レッスンを体験されるMさまです」

そう言うポーカー女史を見て、僕は驚きました。

そこには戸惑いの表情が、ありありと見て取れたのです。

 

ポーカー女史のそんな顔を見るのは初めてでしたから、それが何を意味するのか気になりました。

でも今、肝心なのは体験レッスンであって、ポーカー女史の心情を推し量ることではありません。

 

ソファーの中高年女性に、自己紹介すべく近づこうとした僕は、あっけに取られました。 

ポーカー女史の背後から、不意に第三の人物が現れたのです。

 

それは、小粋よいロック系スタイルを、シックでモダンなファッションに組み込んだ、ショートカットの若く洗練された女性でした。

Mさんだと紹介されたその女性は、あっけにとられている僕をよそに、スタスタと教室の中に入ってきます。

 

僕は、自分の想像力という想像力をかき集めてみました。

そして考えうる限り、Mさんの年齢の上限を推理してみました。

それでもMさんが、予期してた歳の半分にも満たないことは明白でした。 

 

やんわり探りをいれてみたところ、Mさんは低く落ち着いたトーンで答えます。

「H大学歯学部の3年生です」

 

僕は、準備してきた熟年向けの楽譜に目をやると、心の中で叫びました。

「オーマイガ〜! ポーカー女史! このお嬢さん、まだ成人したばかりじゃん!!」

(続く)

 

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ヒデキマツバラ Voyage Voyage (Mike Koglin Remix) by Hideki Matsubara 美美の環ミュージカル『続・甘茶姫』 - YouTube

 

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