今週早々ヘアサロンに行き、ずっと長いこと金髪だった頭を黒髪に戻しました。
日本国民のひとりとして、弔意を表すために。
あれから早1週間たちますね。
失敗から返り咲いた男、安倍晋三元首相。
そんな安倍さんから学んだ勇気について、書いていこうと思います。
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失敗した男
「安倍晋太郎外務大臣のお子さん」という肩書き抜きに、安倍さんを一人の政治家として我々が意識するようになったは、官房副長官をされていた時のあの救出劇でしょう。
当時の小泉首相が北朝鮮を電撃訪問して、拉致被害者の方々の帰国を実現させた時、同行していたのが安倍さんでした。
拉致被害者の方々に寄り添うその頼もしい姿は、ヒーローに映ったものです。
だからこそ、首相に昇りつめた安倍さんがわずか1年で辞任された時、我々はとても失望しました。
5年後の自民党総裁選に出馬された時も、その失望感はまだ尾を引いていました。
6年もの間、毎年総理大臣が入れ替わり、早熟な実さえ収穫できない日本の政治畑で、よりによって一度失敗した男が再びしゃしゃり出てくるなんて。
どうせまた短命政権で終わるのだろう、と冷めた目を向けていました。
カムバック前夜
そんな色眼鏡で安倍さんのことを見ていたものですから、内閣総理大臣に返り咲く直前、あれ?と思う事が2つありました。
温泉対談
ひとつは、一度目の辞任後に出演されたというテレビ番組からの抜粋シーン。
その中で安倍さんは、毒舌家で知られた故やしきたかじんさんと温泉に浸かりながら、日本の未来についてトークしていました。
かつて首相経験者が、そのような形で番組に出演した前例があったでしょうか。
小泉さんのユニークな人柄や破天荒な言動に比べ、後任の安倍さんは典型的な「政治家」風情で、その人間味までなかなか伝わってきませんでした。
ですから、男同士で裸になり腹を割って話そうとしている安倍さんの意外な姿は、僕の印象を変えました。
もしかして安倍さんって、実はもっと懐の大きい人で、意外とユーモアを介する人なのでは?
思えば、リオデジャネイロオリンピックの閉会式でマリオに扮したのも、そうした安倍さんの一面でしたね。
あんな痛快なことができる首脳は、日本どころか世界にもいないでしょう。
昭恵夫人の一言
もうひとつは、ニュースサイトで読んだ記事だったと思います。
一度総理を辞任した際、昭恵夫人が安倍さんの体調を気遣って「もう政界を引退してゆっくりしてほしい」と伝えた、そんな内容でした。
ちなみに当時まだ昭恵夫人は、今のようにメディアで取り上げられることもありませんでした。
「昭恵夫人がどんな方かは知らないけど、まだ50代で働き盛りの旦那さんにそんな風に言えるなんて、抱擁力のある奥さんだなぁ」と思ったものです。
そして安倍さんはと言うと、理解ある奥さんの勧めに従って悠々自適な生活に入る、なんてことは当然なくて、政治という主戦場へ戻ることを選ばれました。
そこがまた、同じ男としてグッときたわけですよ。
「もう音楽は引退してゆっくりしてほしい」なんて言われたら、僕も「それはない!」って思いますからね^^
これらのことをきっかけに、僕の安倍さんを見る目は変わりました。
「権力に固執する男」から「自分の可能性に挑戦する男」へ。
勇気ある男
自民党総裁選、そして衆院選挙と勝利を収めて、首相の座に返り咲いた安倍さん。
開口一番、打ち出されたのが「アベノミクス」「三本の矢」といった具体的で個性的な政策です。
これが付け焼き刃で考えついたものでないことは、誰の目にも明らかでした。
アベノミクスなんてネーミングセンスからしてあっぱれで、岸田現首相の唱える「新しい資本主義」と違い、造語にもかかわらず万人に(外国人にも)見えやすい言葉。
これらの目玉政策を打ち出した就任会見には、目を見張りました。
では第一次内閣が破綻した後、失意の5年間で、安倍さんはこれらの政策をじっくり立案してきたのか!
国民の前で失態を演じ、その醜態を国際社会に晒され、「失敗した男」の烙印を押され、打ちのめされた5年の間に!
何と勇敢で、打たれ強いのでしょう。
そう、安倍晋三は「失敗した男」ではなく「失敗から学ぶ勇気を持つ男」だったのです。
そして立ち上がり、自分の信念に挑みました。
こうした行為は、その偉大さゆえ、同時に多くの人たちをも勇気づけます。
僕もその中の一人でした。
えぇ、僕に自信を取り戻させてくれるロールモデル(=お手本)の一人が安倍さんだったのです!
安倍さんの遺したもの
そうして不死鳥のように蘇った安倍さんは、第一次安倍内閣とは別人でした。
以来、国内外で多大な影響を及ぼして、多国間協調主義を貫きながら日本の発展と世界平和に力を尽くされたのは言うまでもありません。
トランプ元大統領やプーチン大統領をはじめ、タリバンからも弔電が届き、世界中から惜しまれた安倍さん。
銃撃されて死亡が確認されるまでのわずか5時間で、無事を祈るTシャツがアメリカのアマゾンで発売されるほど高い人気を誇った安倍さん。
とりわけ個人的に感動したのが、日本人が誰一人参加していない国連安全保障理事会で、15カ国の代表たちが黙祷を捧げた姿でした。
何がこれほど世界の人々の心を動かしたのでしょう?
安倍さんがその生き様を通して世界に遺したものは何だったのでしょう?
それは「勇気を持って自分の信念に挑み続けること」「人間とは可能性に満ちた懐の大きい存在であること」を体現する男の姿でした。
モーツァルトのレクイエムより『涙の日』を安倍首相に捧げます。