今日ご紹介する楽曲は、DT8プロジェクト「ホールド・ミー・ティル・ディ・エンド」
昨年末、リリックビデオ第2弾として動画制作したものになります。
歌詞/対訳
HOLD ME TILL THE END
by DT8 PROJECT feat. ALEXTA
Voiceless whispers
Running through my head
Haunting Vespers
Prayers for the dead
There are lights on
And pervious clear ahead
I was certain
You'd be there till the end
Oh, oh, hold me till the end, oh, oh
Oh, oh, hold me till the end, oh, oh
Shine a light on
So the night in touch
Feel them on rising
Reaching from above
Stars cascading
Light beyond the clouds
Empty rivers
Flowing empty now
Oh, oh, hold me till the end
Oh, oh, I'll take you to the end
Oh, oh, hold me till the end
Oh, oh, I'll take you to the end
La la la...
La la la...
Hold me till the end
Hold me till the end
I'll take you to the end
Oh, oh, hold me till the end
I'll take you to the end
Oh, oh, hold me till the end
声なき囁きが 脳裏を駆け巡り
死者のために 祈りが捧げられ
晩鐘の音が 余韻を残します
立ち並ぶ光が 行く先をどこまでもくっきり照らします
信じていました あなたが最期までそばにいてくれると
あぁ 抱いていてください 私が息絶えるまで
あぁ 抱いていてください 天に召されるまで
光を灯してください
そうすると 夜の帳が忍び寄ります
天からお迎えがもたらされ
死者が昇天してゆくのを 感じとってください
星々が 流れ落ちてゆきます
暗雲の向こうに 光が射します
ほら 干上がった河が 無の境地へと流れてゆきます
あぁ 抱いていてください 私が息絶えるまで
あぁ 旅路の果てまで あなたを連れてゆきましょう
あぁ 抱いていてください 天に召されるまで
あぁ お別れの場所まで あなたを連れてゆきましょう
息絶えるまで 抱いていてください
天に召されるまで 抱いていてください
旅路の果てまで あなたを連れてゆきましょう
あぁ 抱いていてください 私が息絶えるまで
お別れの場所まで あなたを連れてゆきましょう
あぁ 抱いていてください 天に召されるまでは
対訳/ヒデキマツバラ
トランスミュージックの魅力
こんなに深宇宙を感じさせる、美しくも泣ける音楽があったでしょうか。
本作が発表された2007年以来、その想いは変わりません。
むしろ人生を生きていくほど、この歌に内包された「美しき哀しみ」はリアルに胸に響いてくるのです。
シンフォニックなシンセサウンド、前進していくビート、そして切ない歌声。
それらが三位一体となって、深宇宙へとトリップさせてくれます。
トランスミュージックの魅力は、人間を超越したスケールの大きいものを表現しているところ。
それはマクロコスモス(大宇宙)と、ミクロコスモス(人間の霊性=スピリチュアルなもの)
だからこそ大音響のダンスフロアで流れてくると、感情を揺さぶられます。
周りのオーディエンスと共に、高く両腕を上げて天を仰ぎ、人智を超えた神々しいパワーが降り注いでくるかのように、その美しい音楽に涙するのです。
宇宙の祈り
歌の内容は、歌詞のどこを読んでも明らかな通り。
天に召される者の想いを歌った、旅立ちの歌です。
宇宙的な祈りの歌とも言えるでしょう。
Voiceless whispers ボイスレス・ウィスパーズ(声なき囁き声)
Haunting Vespers ホーンティン・ヴェスパーズ(余韻を残す晩鐘の音)
冒頭から、こんな美しくも儚(はかな)い言葉が韻を踏んでいるなんて。
文学魂が揺さぶられ、胸にグッときます。
他にも文学的な表現が散りばめられてまして
Stars cascading スターズ・カスケイディング
(滝のようにこぼれ落ちる星々)Empty river flowing empty エンプティー・リバー・フローイング・エンプティー
(干上がった河が虚無へ流れる)
これらを日本語で簡潔に訳していくのは、感性と知性を総動員しながらの作業で^^;
やり甲斐ありつつ、限界も感じつつ、、、の楽しい時間でした^^
もっと詩的にドラマティックに訳すこともできましたが。
死期を目前にした人が訥々(とつとつ)と本心を語るような、穏やかで静謐(せいひつ)な口語体をあえて選びました。
というのも、最愛の母を見送ってからまだ日が浅く、「死」というテーマを劇的なドラマとして描きたくなかったのです。
このリリックビデオ自体「宇宙の果てよりも遠くへ逝ってしまった母を探す旅」をコンセプトに作ったものでしたから。
作品リリース事情
続いては、本作にまつわる諸々の背景について書いていきますね。
まずアーティスト名の「DT8」とは、本作を手がけたダレン・テイトのイニシャルです。
とりわけ「T8」の部分は、Tと8(eightエイト) で「テイト」と読ませるわけですね^^
ダレン・テイトの名声は、このDT8プロジェクトを始動させるはるか以前から、イギリス国内で高まっていました。
様々な名義でリリースするたびにヒットしては、全英チャートにランキングされていたものです。
本作はDT8プロジェクト5枚目のシングルにあたります。
当初、ソニーUK傘下のダンス系レーベルDirection(ダイレクション)からプロモCDがリリースされました。
速攻でイギリス中のクラブでかかりまくって、ダンスフロアを賑わします。
が、どういう事情があったのか、なかなか一般発売に至りませんでした。
リリース日まで告知されていながら土壇場で発売中止の多いイギリス音楽事情に詳しい僕としては、当時ヤキモキしたものです^^;
ようやく彼自身のレーベルMondoからリリースされたのは、半年も経過した頃でした。
ところが無事発売できたと思ったら、全英ナショナルチャートにランクインされません。
ずっと彼の音楽を追い続けてましたが、ランクインすらしなかった曲は、彼の音楽キャリアで初めてのことだったと記憶しています。
こんなに素敵な音楽なのに、なぜランクインできなかったのでしょう!?
イギリス音楽チャートの奇妙なルール
当時のイギリス音楽チャートには、奇妙な新ルールが設けられていました。
「CDシングル収録曲は3曲まで、合計20分以内に収めること」
それを超えたCDは、売上枚数に関係なく、全英CDシングル売上チャートのランクイン資格を剥奪されてしまうのです!
ロックやポップスと異なり、クラブミュージックは1曲が7〜8分あります。
発売の際には、バージョン違いやリミックスを数曲加えて、数十分は収録されるのが当たり前でした。
が、新ルールに対応するため、大手レコード会社所属のクラブ系アーティストたちは、強制的に収録曲を短くカットさせられました。
もし本作もソニー系レーベルから発売されていたら、間違いなくその憂き目にあっていたことでしょう。
全英チャートにランクインされないことを前提に、ダレン・テイトは思い切ったことをやりました。
なんと収録時間1時間8分もの10曲入りシングルとしてリリースしたのです!
あっぱれ、ダレン!
おかげで僕らトランス音楽ファンは、大盤振る舞いのスペシャルCDをほんのシングル価格で手にすることができたのです。
けど、チャートマニアの僕としては想像しちゃうわけですよね。
もしこの曲がチャートインしたとしたら、果たして何位まで昇りつめていたのかと!
初アルバム
当時UKトランス系アーティストの多くは、とても完成度の高いシングルを発表していながら、アルバム制作には消極的でした。
ダレン・テイトほどにイギリスで名の知れたアーティストでさえ。
だから、そんな彼の初アルバムが決まった時の喜びときたら!
それがDT8プロジェクト名義のアルバム「パーフェクト・ワールド」です。
本作はその先行シングルとなった記念作品でもあります。
そのアルバムは豪華2枚組で、いずれも女性ボーカルをメインにした美しい作品が目白押し。
トランスアルバムの中で1番か2番くらいに大好きなアルバムなので、いずれ機会があればレビューしていきたいです!
アーティストプロフ
Darren Tate ダレン・テイト
ロンドン出身のサウンドプロデューサー/作曲家/DJ
クラシック音楽教育を受けながらも、クラブミュージックに傾倒。
女性ボーカルトランス作品を手がけ、DT8プロジェクトの他、Jurgen Vries(ジューガン・ヴリーズ)Angelic(アンジェリック)Orion(オライオン)等、多数の名義でヒット作を連発。
とりわけ、幼き国民的クラシック歌手として知られたシャルロット・チャートをフューチャーした「The Opera Song」は全英3位のナショナルヒットを記録。
自身のレコードレーベルMondo(モンド)を立ち上げ、数々の新人トランスアーティストたちを世に送り出した。
近年ではダンスミュージックから距離を置いて、20本以上もの映画音楽を手がけている。
Alexta アレクサ
イギリス出身のボーカリスト。
ロックバンド No Obligation(ノー・オブリゲーション)のメンバーとして活動中。
アレクサ名義でDT8プロジェクトのアルバム「パーフェクト・ワールド」に参加、メインボーカリストとして7曲(リミックスを含めると13曲!)で客演している。
芸名はアレックス・タイラー。亡き女友達アレクサの名にちなんで名付けたのだとか。
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