
昨年末から続けてきた中山美穂さんの追悼特集。
連載4回目の本記事では、歌手活動のターニングポイントになった名曲『人魚姫 mermaid』をクローズアップします。
様々なアングルから、時代を先取りした本作の魅力を再発見していきましょう♪
●中山美穂さん関連記事
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「ザ・ベストテン」などTBS系列歌番組で披露された生歌134曲を収録!!!
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人魚姫 mermaid(13thシングル)

まるで真珠なくした 貝殻みたい
作詞/康珍化、作曲/CINDY、編曲/Rod Antoon
トップアイドルとして比類なきチャレンジに歩を進めたのが本作『マーメイド』
結果、歌番組では3ヶ月もの間ランクインし続けて1位を連発、かつてない成功を収めたロングセラーとなりました。
進化したサウンド
本作は美穂さんに2つの変化をもたらすことになります。
まず1つ目が、楽曲/サウンド面での進化。
『マーメイド』以前の楽曲は、ディスコ/ロック/ラテンなどをブレンドしたライブ映えするダンサブルな作風で、視聴者である僕たちも一緒になって口ずさめる歌謡曲の作りでした。
そこから脱した本作は、当時アメリカ音楽市場のメインストリームを席巻していたブラコン(黒人コンテンポラリー音楽)サウンドを大胆に導入。
隙のないソリッドで野心的な打ち込みビートは、玄人(くろうと)好みでファンキーかつセクシークール!
その斬新な音使いで、美穂さんの歌にアーティスティックなイメージが確立されました。
無名ソングライターの起用
本作の冒険ぶりを感じさせたのが、無名だった女流作曲家CINDYの起用です。
それまで美穂さんのシングル曲を手がけたのは、日本の歌謡史に残るトップクラスのメロディーメーカーたち──筒美京平、竹内まりあ、財津和夫、小室哲哉、門松敏生──でした。今考えてもすごい顔ぶれ!
一方、本作を手がけたシンディーさんは、異色の経歴の持ち主。
渡米後、音楽ライターやバッキングコーラスとして活動しながら、スティービー・ワンダーやライオネル・リッチーらと関わり、帰国してからシンガーソングライターやセッションシンガーとして活動をスタートした矢先でした。
トップアイドル中山美穂の劇的な転換期において、そんなシンディーさんに白羽の矢が立ったのは、さぞリスクの伴う冒険だったことでしょう。
でも美穂さんは、本場アメリカの音楽シーンで培われたシンディーさんの感性をも糧として、アイドルスターからスーパースターへの脱皮に成功したのです。
脱アイドル戦略
ここで話題を先へ進める前に、この時期の美穂さんがイメージ戦略を変える必要があった理由をお話ししましょう。
80年代当時、アイドルとして売り出せるのは年齢的に18歳の高校卒業時まで、翌春から脱アイドルに舵を切るのが常でした。
つまり学生やキッズをファンベースとしたアイドル商売から卒業して、大人の鑑賞にふさわしい「魅せる表現力」を持ったエンターテイナーに転身できるか、岐路に立たされたわけです。
豊かな歌唱力や表現力は言うに及ばず。
笑顔を封印して、真顔で歌を伝えられるか?
若さやパワーを封印して、聴くものを共感させる憂いや悲しみを表現できるか?
そんなわけもあって、多くの女性アイドルたちはバラード路線にシフトしていきました。
そこで試されるのです。
本物のスターの資質・風格が備わっているか。
はたまた、作り物のアイドルにすぎなかったのか。
後者の場合、キラキラな笑顔や衣装、振付を封印した途端、魔法が解けるようにアイドルとしての華までも失い、あからさまに人気が低迷していきました。
結果、旬を逸した数多くの女性アイドルが、歌手活動に見切りをつけタレント業へ移行するか、芸能活動をフェードアウトせざるを得なかったのです。
コンセプチュアルな表現力
そんなターニングポイントにおいて、美穂さんが選んだ楽曲こそ、この斬新な『マーメイド』でした。
ここで彼女は他の女性アイドルには真似できないユニークな試みに出ます。
シンガーではなく、アクトレスとして歌を表現したのです。
つまり『マーメイド』が美穂さんにもたらした2つ目の変化は、コンセプチュアルな表現力だと言えるでしょう。
本作で美穂さんが演じたのは「大都会で恋に悩む人魚姫」
歌の中で「キスを交わしたきり都会の雑踏に紛れてしまった彼ともう1度会いたい」と願います。
天才作詞家、康珍化さんは、その切ない女性心理を、誰もが知るアンデルセンのおとぎ話『人魚姫』のストーリーとマリアージュさせました。
つまりおとぎ話の悲恋物語をベースとしつつ、都会に生きる現代女性たちの抱えるリアルな孤独感や心の渇きまでもを、この歌で鮮やかに代弁してみせたのです!
当時OLファン層から絶大な支持を得た作品になったのも納得でしょう。
「おとぎの人魚姫」の姿を借りて「リアルな女性像」を歌で演じるアクトレス中山美穂。
それは女優としても常に第一線を走り抜けてきた彼女だからこそ成せることでした。
『マーメイド』を歌う美穂さんに、1年前の小麦色したサンシャインガールの面影はありません。
シックな大人の女性へとトランスフォームして、スーパースターの境地へ達したのです。
独創的な振付/演出
各動画でご覧になれる通り、歌番組で披露された『マーメイド』は、いつもバッキングコーラスを3名ほど従えていました。
まるでマネキンが踊っているかのような、シックでシアトリカル(演劇的)な振付には心底魅せられました。
特に大好きな箇所がエンディング、美穂さんら4人が斜めに揃って並び、左右にカクカク揺れる振付です♪
ふと今ひらめいたんですが、もしかしたらバックの3人は「人魚姫をサポートするお姉様」という役どころだったのかも!
ちなみにアンデルセン童話では、6人姉妹の設定ですね。
王子様との恋が叶わず、魔法が解けて海の泡と化す人魚姫のことを案じた5人のお姉様たちが、王子を刺し殺すよう短剣を用意して、人魚姫を説得するわけです。
美穂さんはそうしたストーリー性を、バック3人と共に演じているように見えませんか?
最後にもう1つ。
「大都会を舞台にした人魚姫の悲恋物語」というコンセプチュアルなテーマは、舞台美術さんたちをも刺激したようで。
当時どの歌番組でもこの『マーメイド』が披露される際、都会や海原をモチーフにした大掛かりなセットが組まれたのが深く印象に残っています。
というわけで本日は、ミポリン名曲12選より『人魚姫 mermaid』をクリエイティブな観点から述べてみました。
次の回では残り5曲を特集していきますので、ご期待ください♪
(続く)
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