大舞台をつくるのはマラソンのようだ。
ほんの2時間分の夢を紡ぐため、人生のうちの半年近くをかける。
時間を掛けて、天に賭けて、ただひたすらに駆ける。
器量を試され、裁量を試され、度量を試される。
向かい風に気が挫けることもあれば、追い風に助けられることもある。
そうして迎えたゴール。
達成感と興奮、歓喜、それに反省点を少々まぶし、さまざまな感情の闇鍋が、アツアツのまま喉元を通り過ぎていく。
それらを消化し尽くした果てには、なんとも奇妙な感覚が心身を襲う。
すべてを終え、フワフワと地に足のつかない無重力感だ。
すべてを終えた翌日。
それは使命感とやりがいで突っ走ってきた日常からチョキンと切り離される日。
これから先のどこにもまだ属していない宙ぶらりんな日。
泥のように眠りこけ、夕刻近く「ごはんですよ〜」という声でベッドから這い出る日。
それが今日は少し様子が違った。
朝一番の目覚め。
外で小春日和が手招きしている。
その誘いに乗った。
心地よい筋肉痛を抱えながら、冬の外気と陽射しを友として、そぞろ歩くこと午前いっぱい。
汗ばむほどに意気揚々と帰宅。
図書館で大量に借りた本。
ページをめくること十数ページ。
泥のような眠りに落ちた。
「ごはんですよ〜」
声がかかる。
はて、ここはどこ?
昼なのか夜なのか?
もしかして、まだ本番前?
どこからが夢で、どこからがうつつなのか。
ベッドから起き上がる。
かたわらには読みかけの本。
応接間には花束とギフトの数々。
安堵の寝息を立てるのは、昨日丸一日さみしく留守番役だったニャンコたち。
そして東の空にかかる大きな大きな満月。
目にするものすべてが重力を宿していた。
風船のようにフワフワした気持ちに重石がつけられた。
それはまるで祝福だった。
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