中山美穂さんの追悼特集も3回目。
いよいよ彼女のシンガーとしての魅力にスポットを当てていきます!
美穂さんを追悼した過去記事
- 歌手になるために生まれてきた人
- 色・ホワイトブレンド(4thシングル)
- WAKU WAKUさせて(8thシングル)
- 派手!!!(9thシングル)
- 50/50(10thシングル)
- CATCH ME(11thシングル)
- You're My Only Shinin' Star(12thシングル)
歌手になるために生まれてきた人
美穂さんは、まさしく歌手になるために生まれてきた人でした。
その艶やかで伸びやかな歌声は容姿同様に大人びており、様々な楽曲性にも恵まれ、アイドル歌謡からシティーポップ、ブラックミュージック、AORへと進化を遂げて行きました。
百花繚乱な女性アイドル黄金時代だった80年代、まだ子供だった僕は妹と一緒にいろんなアイドルソングに熱中したものです。
とりわけダンサブルな美穂さんの楽曲は、踊ることが好きだった僕にうってつけで夢中になりました。
出す曲出す曲どれもキャッチーでクオリティーが高くて、いまだ鮮明に蘇ってきてはふと口ずさんでしまうことも多く^^
そこで本記事では、数あるミポリン関連作品から、思い入れ深い12曲を厳選していこうと思います。
歌詞の中から、彼女の生き様や恋愛観を象徴したワンフレーズもピックアップしてみました。
当時のジャケットや歌唱映像と共にお楽しみください♪
色・ホワイトブレンド(4thシングル)
大好きな季節が 涙をはらいのけて 私をきれいにしてくれる
作詞・作曲/竹内まりあ、編曲/清水信之
これで15歳! 歌手デビューしてまだ半年! 完成されすぎですよね!
スキップしているような愛らしいメロディーに、リズミカルな歌詞は、さすが竹内まりあさんが手がけただけあります。
これ以前の楽曲では、主演ドラマや映画でのツッパリ少女役をイメージした作品が続いてましたが、心機一転。
王道アイドル路線にイメチェンした本作は、失恋から新しい恋へと扉を開けるラブソングです。
本人出演の化粧品CMソングとしても使われたことで、一気にファン層が広がり、それまでの彼女の最高ヒット作になりました。
結局この路線は1曲限りでしたが、まだアイドルソングに疎(うと)かった当時の僕を射とめるには十分でした^^
チャーミングさの際立つ歌ですが、実はメロディーの起伏が激しく、跳躍音だらけで難易度の高い作品です。
これをさらりと歌いこなせる実力を持ったアイドルとなると、今でもなかなかいないのでは?
WAKU WAKUさせて(8thシングル)
もっと近くにおいでよ 息が触れあうくらいにね
美穂さんらしいダンサブルでライブ映えする1作。
派手な衣装であればあるほど着こなせてしまえるスター性はさすが!
80年代にアイドルソングを作らせたら右に出るものはいない黄金コンビ、松本隆さんと筒美京平さんによるディスコソング。
バブル景気でディスコ全盛期だった当時を反映して、臆病な相手を煽(あお)って誘う歌詞がやけに新鮮に聞こえます。
そう、あの頃はディスコこそ出会いの場で、恋が始まる場所でした。
スマホで緩(ぬる)く繋がる現代と違って、誰もが夢中で恋をしていた時代だと言えるでしょう。
この歌もメロディーのアップダウンが激しい上に音域まで広いので、いざカラオケで歌おうとしてメタメタになった人が多いのでは?^^;
ソングライターの至上命題は歌い手の声域に合わせた曲作りですが、その点、美穂さんに楽曲提供した作曲家たちは制限なく思いのまま作れて、さぞ恵まれていたでしょうね。
この頃やっとアイドルソングに興味を持ち始めた小学生の僕は、テレビの前で歌番組の歌唱シーンをラジカセに生録音しては聴き込む毎日でした。
夕食中の家族に向かって「シー、静かに!」と言って録音ボタンを押した日々が懐かしい^^
派手!!!(9thシングル)
派手!!! だね!!! 派手もいいけど 道路でKissはちょっと行きすぎ
彼女の美しい顔立ちはもちろん、衣装の着こなしも僕好みでした^^
この大ぶりなハットに、ルーズでフェミニンなニットワンピース♪
こんな個性的なスタイリングが似合ってしまうアイドルは美穂さんしかいませんでしたね。
ミポリンには殊のほかダンサブルな楽曲を提供していますね。
本作のテーマは<Secret Love>
現代と違ってコンプライアンスのない無法地帯だった当時は、芸能人同士のおつきあいとなればマスコミの壮絶な追っかけスクープ合戦が繰り広げられていました。
そんな時代を反映したラブソングですね。
面白いのは、前作『WAKU WAKUさせて』で「地味っぽい恋はイヤよ/生き方を派手にしなよ」と歌っておきながら、逆に今作では「派手もいいけど 愛した時は もっと地味にね」とたしなめているところ^^
きっとディレクターさんと作詞家さんの遊びなのでしょう♪
50/50(10thシングル)
死んでるみたいな 馴れ合いの恋 したくないだけなの
10thシングルは、カリブ海のラテン的なムードが伝わってくる
恋の駆け引きを歌った軽快なサマーソングで、ラテン系美人の美穂さんだからこそ似合ってしまう楽曲です♪
TMネットワークとしてメジャーになる前の小室哲哉さんが手がけられ、長調と短調を行き来するドラマティックな楽曲構成になってます。
そういえば竹内まりあさん同様、小室さんも80年代当時、職業作曲家として意外と多くの女性アイドルに楽曲提供されてましたね。
アレンジャーの船山さんも素晴らしい仕事ぶりを聞かせてくれます。
カリブ海のラテン的ムード漂う音使いが随所に散りばめられ、エンディングは圧巻です♪
Wikipediaによるとこの時期、ドリカム結成前の吉田美和さんと中村正人さんがミュージシャンとしてバックについていたとか!
バッキングボーカルの右側の方がそれらしく見えたり?
凝った歌詞は、当時まだ僕が知りようもないワードのオンパレードで。
「熱いアバンチュール」「カリプソのリズムで恋愛を操る」「灼けた素肌にラタンが痛い」etc
どんな意味なのか、ワクワク想像力を掻き立てられたものです^^
今にして思えば「死んでるみたいな馴れ合いの恋したくないだけ」というフレーズが、結婚出産後も恋に生きた彼女の後半生を先読みしているかのようでもあり。。。
CATCH ME(11thシングル)
何かが私の中で 変わってゆく気がするの もう流されたくないわ
作詞・作曲・編曲/角松敏生
このルックスと歌声で、まだ17歳!
ボディーコンシャスなファッションを先取りして、キレッキレなダンスを見せてくれます!
バッキングボーカルのお二人が、当時どの歌番組でも終始にこやかに踊ってる姿が好印象でした♪
この劇的にかっこいいシティーポップを手がけたのは、都会派シンガーソングライター角松敏生さん。
もはやアイドル歌謡の域を超えた本作で、美穂さんの音楽キャリアで初めて売上1位を記録しました。
僕の一番好きなミポリンソングなんですが、なぜか彼女の音楽キャリアの中で一般的に語られずスルーされることの多い楽曲でもあります。
でも動画の書き込みを眺めてみたら「この曲が一番好きだった」いうファンが沢山いらっしゃるではありませんか! おぉ、同士たちよ^^
そこで、本作のどういうところが人気の理由だったのか、改めて聴き込んでみました。
大人びたマイナー調の切ないメロディーは文句なしに良い! けど、それだけじゃない。
そこでバッキングサウンドの音使いに耳をすませてみると、日本人好みなユーロビートやHi-NRG(ハイエナジー)サウンドからの影響が聞き取れるんですね!
そう、オシャレでメロディアスなシティーポップでありながら、僕らダンスピープルが大好きなユーロ系サウンドの要素が融合している、だから普通のJポップにはない独特な味わいがあるのです。
次第にこうした作風は日本歌謡界で主流になっていき、本作の後を追うようにWinkがカイリー・ミノーグをカバーしたり、現在は演歌で活躍されている長山洋子さん(!)がバナナラマをカバーするなど、本場のヨーロッパを超えて日本が世界一のユーロビート大国となる程の大ブームを巻き起こすことになりました。
本作は彼女主演ドラマ「おヒマなら来てよネ」の主題歌でもありました。
劇中ではソロデビュー直後の工藤静香さんと共演していて、2人でキャイキャイワチャワチャやってる姿が見てて楽しかったです^^
これを機に親友になったお二人は、共に時代をリードする人気トップアイドルの座へ昇りつめ、南野陽子さんや浅香唯さんと共に「女性アイドル四天王」と呼ばれることになりました。
You're My Only Shinin' Star(12thシングル)
星と同じ数の めぐり逢いの中で 気がつけば あなたがいたの
作詞・作曲・編曲/角松敏生
様々なテーマでダンサンブル路線を貫いてきた美穂さんにとって、12作目にして初のバラード作品。
彼女の代表曲として語り継がれてきた名曲で、打ち寄せる波のように起伏に富んだメロディーが圧巻の美しさです。
歌詞は冒頭から「月が波間に浮かぶと あたたかい夜が忍んでくる」とシネマティックな心象風景が広がります。
思えば80年代の歌には、文学作品のような趣(おもむき)と豊かなドラマ性がありましたね。
前作に続いて2曲連続1位を獲得した本作も、角松敏生さんの都会的なセンスが光ります。
ファン投票で一番人気だったアルバム収録曲をシングルカットされたもの。
デビュー以来、歌手と女優の両立を極めてきた美穂さんでしたが、ますます過密・過酷になるスケジュールによる過労で倒れたのは前作リリース翌月でした。
一時的に芸能活動が全面ストップして、ドラマにも歌にも影響が出ました。
そんな中、過去のアルバム収録曲からファン投票で一番人気だった曲としてシングル化されたのが本作です。
もしかしたら新曲レコーディングに臨める状態でなく、穴埋めとしてのシングルカットなのかなぁ、と当時深読みしていた僕。
この時の病は彼女の喉や気管支に後遺症を残ってしまったのか、以降の美穂さんは伸びやかに発声できず歌うのが辛そうな時がありました。
さて個人的なことなんですが、彼女の衣装を眺めていると、すごく懐かしい気持ちになるんです。
というのも、彼女のファッション性──ゴージャスな衣装、その色使いや生地の質感、大きなヘッドアクセ等──がピアニストだった亡き母の衣装を偲ばせるんですね。
数多くの有名人の中で、僕が美穂さんに特別な思い入れがあるのは、在りし日の母を感じるせいかもしれません。
というわけで、80年代という時代の生き証人として6曲書き終えた時点で、4500字目前です!
さらにあと5000字続くことになるので、折り返し地点からの残り6曲は次回お届けしましょう♪
(後編に続く)
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