ダンスミュージックファンの皆様、お待たせしました。
久しぶりに音楽レビュー/訳詞を紹介していきます。
アーティストにとってターニングポイントとなる楽曲があるもの。
今日の作品はまさにそうした一作です。
無垢な女の子じゃいられない
Dannii Minogue - All I Wanna Do (Trouser Enthusiasts Toys of Desperation Mix)
覗き込んで 私のハートを
教えて 私のことをどう思ってるのか
もしかしたら 私は無垢な少女なんかじゃないのかも
あなたが私に求めていた理想像とは違って
だって
ただ恋人が欲しくなる夜だってあるから
友達なんていらない夜もある
ただ誰かを求めている夜だってある
最後まで抱きしめてくれる誰かを
欲しいものはただ一つ
あなたに触れたい
欲しいのはそれだけ
ただ触れたいだけ
覗き込んで 私のハートを
教えて あなたが欲しいなと思ってるものを
もしかしたら あなたの目に映る私は
あなたが夢に見続けてきた 無垢な少女なんかじゃないのかも
訳詞/ヒデキマツバラ
ズボン狂
ダニー・ミノーグのサードアルバム「ガール」(1997年作)からの先行シングル。
11分を超えるこのエピックな大作リミックスを手がけたのが、Trouser Enthusiasts(トラウザー・エンスージアスツ)
トランスミュージックが持つ、あらゆる魔法と可能性をつぎ込んだ、魅惑のサウンドです。
まず冒頭、灼熱の夏を一気にクールダウンしてくれるラグジュアリーリゾートなイントロからして鳥肌もの。
そこからスピーディーなビートに伴って、高まっていく体感温度。
極上なシンセリード、絶妙な入り方をするシンセシークエンス等、サウンド使いがたまりません。
壮麗なブレイクダウン、その先にはブレイクビートが挟まれ、クラブフロア向けとは思えないほどドラマティックなエピックジャーニーを展開していきます。
日本のクラブミュージックLoverの間では通称「ズボン狂」と呼ばれ、絶大な人気を誇ったトラウザー・エンスージアスツ。
彼について書き始めると長くなるので、いずれまたの機会に述べていくことにして。
ひとつ言えることは、彼の音楽性はキャリア初期のヒデキマツバラにとって憧れ以上のものであり、絶大な影響を受けたってことです。
二番煎じと呼ばせない
ダニー・ミノーグの音楽キャリアでターニングポイントになった「All I Wanna Do」
そのことを詳しく述べていくためにも、まず彼女についてざっくり紹介していきましょう。
移り変わりの激しいUKポップシーンで、30年以上にわたって第一線で活躍している大スター、カイリー・ミノーグ。
その実妹がダニー・ミノーグです。
本国オーストラリアでは、姉妹ともに子役時代からテレビ番組で活動していました。
姉カイリーは国民的ドラマ主演での絶大な人気をきっかけにシンガーデビュー、1位を連発して一躍シンデレラガールへ。
一方の妹ダニーは、姉に遅れること3年、満を辞してシンガーデビュー。
姉の二番煎じという印象を払拭するため、徹底したイメージ戦略の差別化が図られます。
【ヘア&眉カラー】
カイリー:金髪
ダニー:黒髪
【サウンド】
カイリー:UK人気プロデューサーチームによる、メロディアスでカラフルな王道ユーロポップ
ダニー:USクラブ系プロデューサーが手がけた、クールなシカゴハウス
【サイドビジネス】
カイリー:女優として映画出演
ダニー:ファッションレーベル設立&デザイナーとして活動
スポットライトの影
姉のスタイルを踏襲せず、独自路線をひた走っていたダニー。
ここ日本でも度々洋楽雑誌で取り上げられ、FMラジオではチャート番組の常連でした。
またUKを拠点とした小室哲哉さんのクラブ系ユニットEurogroove(ユーログルーヴ)のボーカルに起用され、シングル2作(どちらも名曲!)を発表。
来日頻度も多く、日本のダンスミュージックファンにとってはおなじみでした。
姉の存在さえなければ、ダニーはソロアイドルとして十二分に成功している部類に数えられていたでしょう。
しかし、その成功も姉カイリーのスター性があってのもの。
「ミノーグ」というネームバリューのおかげで、ダニーは注目を集めていられたわけです。
芸能タブロイド紙などでは、常に姉カイリーと比較されました。
そして結論はいつも同じ。
話題性や音楽性、実績や人気など、あらゆる面でダニーは姉のスポットライトの陰にいる印象が否めず、B級感が拭えない、という下馬評に甘んじなければなりませんでした。
姉の陰から抜け出す決め手に欠け、ジレンマを抱えながら活動を続けていたダニー。
そんな彼女に、芸能キャリアの存続が絶望視されるほどの一大スキャンダルが巻き起こります。
(続く)
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