ヒデキマツバラの猫道Blog

ドラネコ視点の少し風変わりな猫道(キャットウォーク)ブログ

【和訳】ガイ・シグスワース&イモージェン・ヒープ/Shurayo (シュラーヨ) 〜沖縄に捧げる命の歌〜 - My Dearest -

 

今日6月23日は沖縄慰霊の日です。

太平洋戦争末期、沖縄では民間人を巻き込む凄惨な地上戦によって、およそ20万人が犠牲になりました。

ほんの中高生が兵士として武器なしで戦場に駆り出されたり、住民の中には自決して命を絶った人々も大勢いて、沖縄県民の4人に1人が亡くなったと言われています。

 

そこで今日は、ガイ・シグスワースによる琉球ソング『シュラーヨ』を取り上げましょう。

リリックビデオ第8弾として制作した動画と共にご覧ください。

 

シュラーヨ:「愛しき者よ」を意味する沖縄方言

 

 

歌詞/対訳

SHURAYO
by GUY SIGSWORTH feat.IMOGEN HEAP

 

【オリジナル歌詞】

ちゅらさ くぬ島ぬ

かばさ ぬしてぃ

平和うにげー

 

しゅらーよ しゅらーよ

にがい くみてぃ

しゅらーよ しゅらーよ

みーまんてぃ たぼり

 

【標準語訳】

美しき この島の

香り豊かなこと

平和を願って

 

愛しき人よ 愛しき人よ

願い 込めて

愛しき人よ 愛しき人よ

見守りたまえ

 

対訳/ヒデキマツバラ

 

南洋の揺かご

海面にキラキラと光り輝くのは、夢見心地なベルの音色。

うねる荒波の嵐をかいくぐっていくのは、冒険心豊かな弦楽器。

 

まるで南洋を航海していくような、スケールの大きい歌ですね。

音楽という絵筆を縦横無尽に走らせながら、壮大な海の揺かごへと漕ぎ出して行く様子が目に浮かびます。

 

このリリックビデオを制作する際、面白いアイディアが湧いてきました。

4種類の言語で歌詞を掲載しよう!

沖縄方言/標準日本語訳/ローマ字表記/英訳を組み込んで。

 

西洋人の歌う琉球ソング

発売前から心待ちにしていたCDがありました。

音楽活動歴30年目になるガイ・シグスワースによる初のソロアルバム『ステット』(2019年作品)

 

実験的でアンビエント電子音楽で構成されたCDの最後を締めくくる楽曲が、本作『シュラーヨ』でした。

沖縄の琉球音階で作られた印象的なメロディーに、女性ボーカリスト、イモージェン・ヒープによる音域の広い独特な歌唱法も相まって、一聴後たちまち大好きになりました。

 

大好きな歌というものは、どんな内容が歌われているのか気になるものです^^

なのに、CDは紙ジャケのみのシンプルな作り。

歌詞表どころかブックレットさえ付属しておらず、ネットでも歌詞は公開されていません。

 

タイトル「シュラーヨ」や歌詞冒頭の「ちゅら」(美しいの意)から察するに、うちなーぐちと呼ばれる沖縄方言で歌全体が構成されているのでしょう。

でも、それを知る手がかりがありません(T_T)

 

実験性と商業性のシーソー

ガイ・シグスワースと、イモージェン・ヒープ。

両者ともイギリス人で、まるで独創性が人間化したようにクリエイティブなアーティスト。

オルタナロック〜実験的な電子音楽あたりの、王道から外れた個性派サウンド好みの読者であれば、ご存知のことでしょう。

 

両者には、類稀(たぐいまれ)なる共通点がいくつもあります。

マルチプレイヤーな演奏力や曲作りはもちろん、レコーディングからサウンドエンジニアリングまで楽曲制作の全プロセスを1人でこなせること。

活動初期の90年代、インディーズ界隈では知る人ぞ知る存在で、誰にも真似できない唯一無二の音作りをしていたこと。

それが今では大物アーティストたちから着目され、ショービズ業界からの楽曲プロデュース依頼が相次いでいること。

それでいてコマーシャリズムに偏ることなく、グラミー賞などで高い音楽的評価を得ていること。

 

そんなすごい才能を持った西洋人2人が、わざわざ極東の国のはるか南に浮かぶ琉球の歌に取り組んでいるのです。

きっと、両者の創造意欲を掻き立てる何かがあったはず。

 

そこが知りたい!

その鍵は、きっと歌詞の中にある!

 

三位一体の幻想美

歌詞の手がかりが得られないまま、モヤモヤしていた僕。

すると、CD『ステット』の発売から半年も経過した頃、思いがけない進展がありました。

 

『シュラーヨ』がシングルカットされたのです。

さらにガイ・シグスワースとしては初めてのミュージックビデオまで公開されたではありませんか!

 

このビデオがまた秀逸なこと!

おとぎ話のようにメルヘンな雰囲気、ハンドメイドな舞台セット、テクニカルな映像美。

それらが三位一体となって、夢のように幻想的でドラマティックな映像表現に仕上がっていました。

 

こうなると、是が非でも歌詞の内容が知りたいものです!

藁(ワラ)の中を針を探すように、海外のネット音楽記事を洗いざらい検索しまくったところ、

見つけた!

 

沖縄方言うちなーぐちの魅力

それはシングル化された『シュラーヨ』をプロモートする、イギリス音楽メディアの記事でした。

そこでシグワース自身が、こんな形で歌詞を公表していたのです。

Chura sa kunu shima nu
Kabasha nushiti
Heiwa unige
Shurayo shurayo
Nigai kumiti
Shurayo shurayo 
Mimanti tabori

 

まるで呪文のようなローマ字表記^^

「シマ」「ヘイワ」といった日本語らしき歌詞も散見されますが、2、5、8行目なんて一語たりとも意味がわかりません^^;

 

カバシャ ヌシティ

ニガイ クミティ

ミマンティ タボリ

 

でもとにかく、これで歌の内容を解明する糸口はつかめました。

意気揚々と意味を調べてみると、

カバサ=香り

ニガイ=願い

 

面白い!

言語好きな僕は、たちまち夢中^^

 

一語ずつ丹念に調べていくうち、思いがけない発見もありました。

例えば、沖縄方言では母音「エ」「オ」があまり発音されず、

「あ・い・う・え・お」なら「あ・い・う・い・う」

「か・き・く・け・こ」なら「か・き・く・き・く」という響きになるのだとか。

 

そういえば昔、ドリフターズの番組で、ハゲ頭の小学校教師に扮した加藤茶さんが、まさしくその発音で「さしすしす」と子供達に教えているコントがあって、僕、大爆笑した覚えがあります^^

東北訛りなどアドリブで器用にコントに取り入れる加藤さんや志村けんさんは、言語学的なセンスの達人でもありましたね^^

 

話を沖縄方言に戻して、もしも沖縄風に「ヒデくんの猫道ブログ」を発音するとしたら、、、

「ヒジくんぬ肉道ブルグ」でしょうか(笑)

 

ともかく、沖縄方言について知識を深めながら『シュラーヨ』を聴き返すたび、僕は感心してしまいました。

イモージェン・ヒープは、なんと忠実に沖縄方言を歌いこなしているのでしょう!

「この島の」→「くぬ島ぬ」

「願い 込めて」→「にがい くみてぃ」

「平和を 願って」→「平和う にげー」

「見守って」→「みまんてぃー」

 

沖縄が象徴するもの

玄人さえも唸らせる独創性と実力を兼ね備えたシグスワースとヒープ。

そんな彼らの手がけた『シュラーヨ』という歌の全貌を、ついに紐解くことができました。

 

それは、祈りと平安に満ちた歌だったのです。

歌の中で直接言及されていませんが、そこには肉親を含め、失われた20万の命に対する慰霊の気持ちも込められているのかもしれません。

 

だからこそ『シュラーヨ』を耳にするたび、敬虔な気持ちにさせられます。

こうして僕ら日本人が、自由で文化的な人生を享受できるのも、先の大戦で散っていった尊い命の犠牲の上にあるのですから。

 

沖縄慰霊の日である今日は、その重みを感じると同時に、自分に与えられたかけがえない命に感謝しながら過ごしたいものです。

 

リリックビデオ制作裏話

『シュラーヨ』にすっかり感動した僕。

この歌詞をもっと積極的に広く世界の人々に知ってもらいたいと決意。

4種類の言語を組み込んだリリックビデオ制作へと至りました。

 

映像に用いたのは、公式のミュージックビデオです。

動画編集で、鮮やかな色味に加工しました。

 

歌詞テロップは、当初、言語4つを同時表記させるつもりでした。

が、いざ文字を画面の上下左右にレイアウトしたところ、テロップだらけな経済専門チャンネルを見てるようで、せっかくの映像美が台無し^^;

 

幸い、同じ歌詞が3度繰り返されるので、コーラスごとに使い分けることにしました。

1コーラス目はローマ字+英訳、2コーラス目は沖縄方言+英訳、最後は標準日本語訳+英訳。

 

単なる娯楽動画ではなく、意義深いものが作れました。

『シュラーヨ』の標準日本語訳や全編英訳をネットで発信したのは、おそらく世界で僕が初めてではないかと。

この動画が、海外の沖縄音楽ファンだったり、シグスワースの音楽性を探求している音楽ファンに届いたら、これほど嬉しいことはありません。

 

内里美香さんのシュラーヨ

『シュラーヨ』は、デジタルEPでもリリースされています。

そこには、沖縄のシンガー内里美香さんの歌うバージョンも収録されています。

編曲やサウンドが一変していて、これまた聴きごたえがありますよ!

 

同EPには、内里さんの歌う『島唄』も収録されています。

ぜひ聴いてみて下さいね。

 

アーティスト プロフ

Guy Sigsworth ガイ・シグスワース

イギリス出身のミュージシャン/ソングライター/音楽プロデューサー/サウンドエンジニア

子供時代からハープシコードを学び、欧州連合バロック交響楽団の一員としてヨーロッパ各地をツアー活動する。

90年代初頭、作曲家/プロシューサーとして、シールやBomb The Bass(ボム・ザ・ベース)といった錚々(そうそう)たるアーティストの作品に参加。

1995〜2001年までビョークのアルバム4作品『ポスト』『ホモジェニック』『セルマソングス』『ヴェスパタイン』に参加、ハープシコードやパイプオルガン、弦楽アレンジ等を担当しながら、次第に共作、共同プロデュースまで手掛けるようになり、ビョークの音楽ディレクターとして活躍する。

電子音楽ユニットAcacia(アカシア)での活動をきっかけに女性ボーカリスト、イモージェン・ヒープと出会い、エレクトロニックデュオFrou Frou(フル・フル)を結成、唯一のアルバム『Details』をリリース。

ゴールディー、タルヴィン ・シンなどトリップホップ系アーティスト作品に参加、共同プロデュースしたMandalay(マンダレイ)のアルバム『Empathy』がマドンナの強い関心を引いた縁で、マドンナのアルバム『Music』(2000年作品)『American Life』(2002年作品)の共同制作/共同プロデューサーに大抜擢され、ヒットシングル『What It Feels Like For A Girl』を生み出す。

以降、ブリトニー・スピアーズアラニス・モリセットシュガーベイブスなど、メジャーアーティストの作品を手掛け、ブリトニーに提供した『Everytime』は全英1位に輝く。

2019年、音楽キャリア30年目にして初ソロアルバム『Stet(ステット)』をリリース。

第一線の商業音楽から、アンビエント実験音楽まで、対極的なサウンドを手掛ける稀有な存在。

 

Imogen Heap イモージェン・ヒープ

イギリス出身のシンガーソングライター/ミュージシャン/音楽プロデューサー/サウンドエンジニア

幼少からピアノ、クラリネット、チェロのクラシック音楽教育を受け、ギターやドラムまでこなすマルチプレイヤーであり、プログラミングやサウンドエンジニアまで手掛ける稀有な女性音楽家

1998年、インディーズよりアルバム『I Megaphone』で歌手デビュー。同アルバムをプロデュースしたガイ・シグスワースと共にエレクトロユニットFrou Frou(フル・フル)を結成。

2005年、自身のレーベルMegaphonicレコードを設立、そこから発表した2作目『Speak For Yourself』がアメリカでも成功を収め、グラミー賞新人賞にノミネート。

2009年、3作目『Ellipse』が全米5位の大ヒット、グラミー賞にて女性初の最優秀エンジニア賞を受賞する。

2014年に4作目『Sparks』リリース、2018年にはハリー・ポッターの19年後が描かれた舞台劇『ハリー・ポッターと呪いの子』サウンドトラック全曲を手掛け、ブロードウェイでも上演される。

テイラー・スウィフトのアルバムに参加、プロデューサー/エンジニアとして再びグラミー賞を受賞。

技術革新にも積極的で、手の動きで音を奏でる手袋型ウェアラブル「Mi. Mu(ミーム)」を共同開発したり、ブロックチェーン技術による著作権管理収益化について論文で提言するなど、音楽技術や音楽産業の抜本的なリノベーションに取り組んで世界的な注目を集めている。

マサチューセッツ工科大学などと共同開発した手袋型ウェアラブル楽器端末「Mi. Mu(ミーム)」

 

Frou Frou結成当時のシグスワースとヒープ

 

◾️ヒデキマツバラLIVE動画◾️️️
大人気のポール・モーリア楽曲より『ペガサスの涙』編曲と振付を手がけました🦄

 

◾️ヒデキマツバラ4Kリリック動画 第8弾◾️️️
南洋へ旅立つ夢見心地なガイ・シグスワース『シュラーヨ(愛しき人よ)』沖縄方言で歌われてます⛵️

 

◾️ヒデキマツバラ制作4Kリリック動画 第7弾◾️️️
ウサギ穴へ落下する「不思議の国のアリス」モチーフの最新動画『ディープ・ダウン』🐇