真冬は、真冬ならではの喜びをもたらしてくれます。
例えばピアノ弾きにとって、これほど嬉しい季節はありません。
なぜなら1年のうち、最も音色が澄みわたるからです。
真冬のピアノを友とする暮らし
真冬の朝一番、ピアノのふたを開けたばかりの鍵盤には、まだ冷気がみなぎっています。
朝食後に水仕事を終えたばかりの、かじかんだ指先に息を吐きかけたら、今日も練習の始まり。
その第一音を奏でた瞬間から、真冬は最良の友になります。
鍵盤の上で踊る指先。
澄み切ったピアノの音色。
そして部屋中に広がってゆく妙(たえ)なる響き。
例えるなら、まだ足跡のない早朝の雪道に足を踏み出す時の、あの感触。
神聖さに触れながら、心踊らせるあの感じ。
ショパンなどロマン派作品でも弾こうものなら、まるで天界にいる心地。
ましてドビュッシーら印象派作品ともなると、妖精の国から聞こえてくる魔法の音楽かと思うほど。
バッハらのバロック作品ときたら、一音一音が繭(まゆ)で包(くる)まれているような響きに生まれ変わります。
真冬のピアノが澄みわたる理由
どうして今の時期、これほどピアノの音色が音響的に美しく澄みわたるのでしょう?
それは寒くて、カラリと乾燥した気候のおかげ。
音を遮る湿気がないので、響きが満遍なく空間を伝わっていくのです。
だとすれば、なぜ歴史的にドイツ語圏の国々でピアノ芸術が花開いたのか、納得できるでしょう。
そうした国々は、大陸の乾燥した気候にさらされ、厳しい冬に閉ざされた地形だからこそ、ピアノの響きにとっては理想的な環境なのです。
湿気の多い日本では、今こそそのチャンスに恵まれている時期。
乾燥注意報や低温注意報が発令されるほど、ピアノの音色も豊かに響く、と言えるでしょう^^
真冬がもたらす「豊かさ」
そう考えてみると、この世はどんなものにも「豊かさ」が備わっているんですね。
寒さのような、人間にとって都合が悪くて、忌避(きひ)すべき事でさえ!
そうした「豊かさ」は巧妙な魔法で目隠しされていて、現実感に支配された頭脳では気づくことができません。
ピアノのような、何か自分の気持ちを精神性や創造性に立ち返らせることで、目隠しが解けます。
そして身も凍るような真冬でさえ、自分に豊かな恩恵をもたらしてくれていると知るのです。
そんなボクは、今日もピアノの合間にティーブレイク。
コトコトお鍋を沸かしては、アールグレイのミルクティーを淹れます。
これも真冬ならではの豊かな愉しみですね^^
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ピアノソロのオリジナル作品『ハイバーネーション』(冬眠の意)