ずっと楽曲プロデュースに専念してまして、すっかりご無沙汰ですm(_ _)m
無事に完成して納品を済ませ、再びブログに舞い戻ってまいりました^^
その楽曲はダンサーのエセニヤさんから依頼された13曲のうちの7曲目。
『Lost & Found』と名付けました。
「失ったからこそ発見したもの」というニュアンスです。
今日はこの楽曲にまつわる、僕の向こう見ずな冒険少年エピソードを書いてまいりますよ^^
- 思い出の笹舟遊び
- 小川を友とした夏
- 冒険少年のロマン
- ある夏のひらめき
- 表情豊かな小川
- おしゃべり好きな小川
- 小川の仲間たち
- 座礁、転覆、救出劇
- 障害物レース
- 夏の日の冒険者たち
- 航海最大の難所
- 旅の終わり
- おばあちゃんの驚き
- バイバイ少年時代
思い出の笹舟遊び
「小川を流れていくおもちゃの小舟、見たことありますか?」
昨秋の制作打ち合わせで、そう切り出してきたエセニヤさん。
途端に子供時代の記憶が蘇りました。
母の生まれ故郷の中国山地、自然豊かな小川での笹舟遊びが。
僕の思い出話を聞いてるうち「良かった、そんなイメージで作ってください」とエセニヤさん。
小川のように変化が欲しいのだと言います。
穏やかな流れ、速い流れ、渦を巻いたり、小さな滝が現れたり。
まさしく願ってもないコンセプトだ!って思いました。
あの愉快な笹舟遊びの思い出を、サウンドで表現する機会が訪れたのですから。
小川を友とした夏
その小川は、本家のすぐそばを流れる、幅3メートルほどのせせらぎでした。
電気が通る以前の時代は、そこで洗濯や皿洗い、米とぎをしていたと言います。
帰省するたび、僕と妹はいつもその小川で遊んでいました。
いえ、小川と遊んでいた、というべきかもしれません^^
澄んだ水をたたえて、嬉しそうに水音を上げる小川。
夏の夜になると、群れなす蛍が幻想的に踊り交わします。
その小川にかかる、小さな橋も大好きでした。
木と土でできていて、用もないのに行きつ戻りつして親しんだものです。
豪雨のたびに流されても、次に行くと新しい橋がちょこんとかかっているのです。
名もない小川でした。
でも僕の大事な友達でした。
これほど愛した川は、後にも先にもありません。
冒険少年のロマン
少年だったある日、僕は母に尋ねました。
「ね、この小川、ず〜っと行ったら、どうなるの?」
「あそこの山の端で本流に合流したあと、江の川(ごうのかわ)になって島根県へ流れ、200kmの旅をして日本海に注ぐのよ」
その話は、冒険少年だった僕のロマンをかき立てました。
この小川、そんなに遠くまで通じてるんだぁ!
ある夏のひらめき
のどかな夏の午後でした。
川辺で妹と笹舟を作って遊んでいるうち、愉快なことをひらめきました。
「ね、この笹舟、ずっと追いかけて行ってみない?」
僕らはすぐ裸足になると、小川の中にジャブンと入りました。
陸上で追いかけていたのでは、茂みが死角になって行方知れずになるからです。
「いい? 流すよ?」
こうして僕らの冒険が始まりました。
表情豊かな小川
小川の表情ときたら、なんて豊かで多種多様なのでしょう。
川の中に入ると、岸の上から見下ろすのと全然違うことに気づきます。
それは起伏に富んだ流れで、ノロノロ淀んだかと思うと、ツイ〜っとスピードが上がります。
川の表情はネコの瞳のように、とどまることなく変化します。
時折、魔法がかった小さな渦がクルクルっと巻いて、川底の砂まで巻き上げられます。
すると笹舟もそれに翻弄されて、クルクルっと小さな円を描きます。
なんと愉快なんでしょう。
「見て、小川も笹舟と遊んでるね」
おしゃべり好きな小川
サラサラと耳に心地よいせせらぎ。
まるで小川のおしゃべりです。
時に小川は奇妙な音を立て、僕らを笑わせます。
プチャプチャ、コポコポ、ポスンポスン♪
川の中を下って行くごとに、小川はいろんな声色で話しかけてきます。
そう、あの頃の僕らは、小川とお話しすることができたのですね。
小川の仲間たち
そのうち、アメンボがツイ〜っと水面を横切っていきます。
川岸の陰でオタマジャクシたちが鬼ごっこして遊んでいます。
夏の陽射しがサンサンと輝いています。
そよそよ緑を揺らして、夏風が舞っています。
生きとし生けるものは何もかも、僕たちに笑いかけていました。
だから僕らも微笑み返しました。
座礁、転覆、救出劇
足の裏に当たっていたサラサラした川底の砂地が、次第にゴツゴツしてきました。
小さな岩がいくつも水面に顔を出して、水しぶきをあげています。
ついに笹舟は、岩と岩の間に挟まり、身動きが取れなくなりました。
ここで冒険を終わらせてなるものか!
すかさず救出に向かいます。
すると今度は段差20〜30cm級の小さな滝が続き、笹舟を飲み込みます。
ここで冒険を終わらせてなるものか!
すかさず救出に向かいます。
障害物レース
ところで、単に笹舟を追うだけでは物足りません。
この冒険をさらに冒険たらしめるべく、最初から僕はとっておきの趣向で、自分たちにハンデを科していました。
当時、僕らが夢中で遊んでいたのが、農作物などを運搬する一輪タイヤ付きの手押し車。
その鉄製の代物を川の中に持ち込んで、障害物競走さながら笹舟を追っているというわけ。
何しろ水の中ですから、砂利道と同じ要領で押せません。
露出した小岩や段差にタイヤが引っかかり、思うように進めません。
だからなお一層、障害物を越えて行くのがおもしろくてたまりません!
手押し車に気を取られ過ぎて、笹舟を見失わないよう、目を配ります。
あぁ、僕らはスリルと冒険を楽しんでいました!
夏の日の冒険者たち
いくつ木橋をくぐり抜けたのでしょう。
笹舟を追いかけ、夢中で歩を進めるうち、景色が一変していました。
1メートル程度の高さだった両岸は、2メートル3メートルと徐々に高くそびえてゆきます。
もはや子供が自力で登れそうな岸はありません。
最初はくるぶしの上ほどだった水深も、膝下、そして膝上まで達しました。
やがて大きな橋のトンネルの先で、目に飛び込んできた難所がありました。
航海最大の難所
それは落差が1メートル弱はあろうかという滝でした。
ここを子供2人で手押し車もろとも乗り切るには、知恵を絞る必要があります。
まず僕が滝の下に飛び降り、上で妹がゆっくり手押し車を押し出します。
下でそれを受け取った僕は、続いて妹の手を取り、ゆっくり抱きかかえました。
水流が増し、水音はゴーゴーと叫んでいます。
その叫びにかき消されないよう、僕らも声を張り上げます。
旅の終わり
難儀しながらも、果敢に難所を乗り切った僕らは、ずんずん進んでいきました。
やがて、ついに本流へと到達することができました。
その先は水深が2メートル以上あるので、ここで笹舟とお別れしなければなりません。
大河へと勇壮に漕ぎ出した笹舟が見えなくなるまで、ずっと見送りました。
おばあちゃんの驚き
日暮れ前、上機嫌で帰宅した僕の語る武勇伝に、おばあちゃんは目を丸めました。
「まぁ、ヒデキちゃん、川の中を2人であんな遠くまで行っとりんさったかね!?」
あれから笹舟とお別れして、僕らは帰路に就くため、苦難の冒険を楽しんでいました。
何しろ今度はあの滝を登らなければならなかったのですからね!
妹を押し上げ、鉄の塊を押し上げながら!
距離にすれば500メートル、往復1kmほどの大冒険でした。
大人になって振り返ると、小さな妹と2人きり、怖いもの知らずだったなぁと^^;
もし滝や岩で滑って足をくじいたりなどしても、500メートル上流へ引き返さない限り、安全に水の中から上がれる岸がなかったわけで。
家にいる大人たちには、川の下流にいる僕らが見えるはずもなく、そもそも僕らがどこで遊び呆けているのかも見当もつかなかったでしょう。
川なのか、田んぼのあぜなのか、山の中に入ったのか。
実際、僕らが足を踏み入れずに引き返した本流では、その昔、遊泳中に水流に足を取られて溺死した子がいたそうで。
あの日、僕らが事故やカッパのいたずらに遭うことなく帰還できたのは、ご先祖様や水神様のご加護があったからなのかもしれません。
でもその夏が過ぎた後も、少年だった僕の心の中は、無邪気な考えでいっぱいでした。
「あの笹舟、無事に日本海までたどり着けたかなぁ?」
バイバイ少年時代
愉快な笹舟遊びは、その夏で最後になりました。
翌年から地区一帯が農地改革によって地形が激変、小川は見る影もなく舗装され、川岸の豊かな緑も全て刈り取られてしまったのです。。。
でも。。。
僕と遊んでくれた小川は、今も笑い声をあげながら、胸の中で流れ続けています。
新曲『Lost & Found』は、8分の12拍子によるフルオーケストラサウンドで、あの日の冒険をありったけ奏でました。
いつか何かの形で皆さんのお耳に届く機会があればいいな。
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