「師は弟子を育て、弟子は師を育てる」という言葉があります。
優れた先生についたからといって、優れた生徒が育つわけではありません。
両者がお互いに研磨し合うことで共に学び、高め合えるからです。
Sくんはスーパーマン
1年前に入会したSくんは、楽曲制作クラスのレッスン生。
無類の音楽好きで、音楽のことを語る彼はキラキラと輝いています。
独学で作曲技法や音楽理論を学んできたSくん。
入会してきた時には「これでついにプロの専門家に直接お話を伺えるんだ!」と興奮気味だったほど。
さて通常、僕の楽曲制作クラスでは、レッスン生が作ってきた自作曲1曲を、数度にわたるレッスンを重ねながら仕上げていきます。
が、Sくんだけは例外です。
何しろレッスンのたびに、次々と新曲を作って持ってくるのですから。
「新しい曲が5曲できました!」
毎度こんな調子なんです。
僕だって人間ですもの。
これほどやる気を見せつけられたら、教える側として俄然、感激して奮え立つわけです。
Sくんから慕われているんだなと感じた瞬間
Sくんはとても律儀な人でもあります。
まだ入会したてだった頃から「お盆で里帰りしてきました」と地元の銘菓を差し入れてくれたり。
カステラ発祥の由緒あるお店なのだとか。
柄のデザインがすごくユニークだったので、紙袋も一緒にパチリと。
Sくんの生まれ育ちの良さに感心すると同時に、慕ってくれてるんだなぁと実感できた一幕でした。
まさしくお弟子さんの鏡ですね。
スーパーSくんの音楽愛に驚かされた瞬間
そんなSくんから一番驚かされた話があります。
それは初めてのシンセサイザー購入のことで相談を持ちかけられた時のこと。
「年末からアフリカに長期出張することになりました」
そう切り出したSくん。
「アフリカ滞在中、仕事終わりの空き時間や休日を利用して曲作りしようと思って」
僕が耳を疑ったのは、次の言葉。
「それでシンセを持って行きたいんです。どんな機種を買ったらいいでしょうか?」
その後、彼はシンセを買って、本当にアフリカの出張先に持っていっちゃいました!!!
シンセばかりか、エレキギターまで抱えて!
筋金入りの音楽好き。
こんなすごいお弟子さんは前例がありません!
ちなみに僕、かつて入院先の病室にシンセを持ち込んで、せっせと制作に明け暮れていたことならあります。
まさしく僕のような師に対して、Sくんのような弟子あり!ですね^^
アフリカとアラブからの風
「こんな歌ができました!」
そう言って、アフリカ出張中のSくんからメールで手書き譜面が届いたりもしました。
向こうでは仕事のほか何もすることがなくて、心置きなく音楽の勉強と作詞作曲にのめり込んでいたみたいです。
そんな彼が、このほど帰国。
お土産を持って、美美の環スタジオに遊びに来てくれました。
「先生はお香が好きだから、こういうのがいいと思って」
そう言って、いただいたのがこちら。
休暇で訪れた中東のオマーンで見つけた乳香アイテムなのだとか。
外装シンボルマークの中央にある文字は「神」を表すのだそうです。
それにしても、開ける前からものすごく香ります♪
さっそく中を開いてみましょう。
おぉ、アラブ趣味の僕にピッタリの一品!
直径10センチもの容器からは、アラビアンナイトの精霊でも出てきそう^^
さらに蓋を取ると、
中身はミドルイースト由来のスパイスでしょうか。
まるでアラブの宮殿にいるような気高い香りで、良い気を放っています。
おかげで美美の環スタジオに拡張高いインテリアが加わりました。
Sくん、どうもありがとう!
弟子に力が備わるかどうかはハナから決まってる
帰国したばかりのSくんは、さっそくいろんな教則本や楽譜を買い漁っているのだとか。
7月からのレッスン再開に向けて、楽曲制作に余念がないとのこと。
意欲と情熱を持って働きかけてくる生徒は、先生の力までも伸ばします。
それは音楽に限らず、スポーツや学校教育にも通づること。
いつも新作と質問事項を山ほど携えて、意気揚々と美美の環スタジオへやってくるSくん。
そんな彼を見てると、僕にも学ぶべきことがたくさんあって嬉しくなります。
生徒に対して、一方的に知識や技術を教え授けるのが先生やコーチの役目ではありません。
むしろ言うなりになる受け身の生徒を持つことは、先生にとって一番不幸なこと。
これまでいろんなレッスン生を受け持ってきました。
その経験から言えることは、全幅の信頼を持って先生を慕ってくる生徒は、おのずと力を伸ばしていくということ。
逆も然りで、生徒(やその保護者)が先生に対して猜疑心を持っている限り、こちらがいくら力を尽くしても、不思議なことに生徒はいつまでたっても未熟なまま、力がつきません。
全ての鍵は、教わる側が握っている。
だから教え子に力がつくかどうかは、ハナから読めるのです。
それに優れた弟子は、たとえ凡庸な師匠からでさえ、何かを学び取ります。
そして凡庸だった師匠に気づきを与え、優れた師匠に生まれ変わるきっかけさえもたらすものです。
なぜなら「教えること」と「教わること」は異口同義だから。
それこそ僕がSくんから得た学びです!
■今月のライブ動画■
雨のニューヨークにインスパイアされた哀愁ハウス「ブルー・マンハッタン」をアップしました!