前回記事に続き、不朽のジャズスタンダード曲『フィーバー』を特集します。
これまで数々のスーパースター達がカバーしてきたFEVER。
いずれも大人の色香漂う、成熟したワインのごとき名作です。
今日は数あるカバーの中から、是非あなたのお気に入りFEVERを見つけてくださいね^^
歌詞/対訳はこちらで。男女それぞれの視点で訳してみました。
- ここからFEVER伝説が始まった
- 最期まで輝き続けたペギー・リーのスター性
- FEVER原曲はR&B男性歌手が歌っていた
- エルヴィス・プレスリーが時代を超えて愛される理由
- マドンナによって電子化された世紀末の新生FEVER
- ジェームズ・ブラウン、サラ・ヴォーン、そしてビヨンセ
ここからFEVER伝説が始まった
アメリカが誇る往年の名歌手、ペギー・リー(1920-2002)
今を遡(さかのぼ)ること60数年前、伝説の始まりは、彼女が歌ったFEVERでした。
その当時の映像がこちらです。
*歌は1分のところからスタートするので、前振りはササ〜と飛ばしてください^^
この気品! このエレガンス!
憧れますね、古き良きアメリカのショービジネス黄金期。
この時代のスターのすごいところは、瞳で歌っていること👀
テレビ黎明期だった当時、視聴者を釘付けにできる目力と雰囲気を兼ね備えたスター性が求められていたのでしょうね。
最期まで輝き続けたペギー・リーのスター性
ペギー・リーはアメリカンドリームを実現させた黄金スターでした。
ウェイトレス生活の傍ら(かたわら)ラジオ番組で歌を披露していた十代から一転、21歳になるとスイングジャズの王様と呼ばれたベニー・グッドマン率いる楽団に参加してレコードデビュー。
多作で知られた彼女は、生涯で58枚ものアルバムをリリースし、全米1位作品3曲を含む70曲以上のヒット曲を放った大スターでした。
僕のお気に入りは、晩年のライブパフォーマンス。
冒頭からして、ペギーが火を吹き消す仕草をすると、全照明が落ちて暗闇になるところなんて、いかにもショービズ大国アメリカらしいお茶目な劇場型演出ではありませんか^^
64歳の渋みを増した外見ながら、シルクのような歌声は健在で、気負うことなくのびのび歌っていますね。
圧巻なのは、貫禄あるエンターテイナーぶり。
指先一本。
視線ひとつ。
そんなちょっとした仕草で、ストーリーを語るように歌っています。
現代ポップミュージックの派手な音楽パフォーマンスに慣れていると、かえってこういうパフォーマンスに新鮮味を覚えませんか?
演出家の視点からひとつ指摘すると、音楽演出に限らず、動き続けていたものが急にストップすると大きなインパクトを生み出すことができます。(最近だとコロナ禍で社会経済全体が停滞したのもその一例ですね)
逆も然りで、静止していたものがパパッと動くと、これまた強いインパクトが生まれるんです。
僕がペギー・リーのパフォーマンスに惹かれるのは、そういう要素もあるのでしょう。
彼女が動けば、世界が輝き出す。
そんな魔法で聴衆を魅了できるのが、真のエンターテイナーである所以なのでしょうね。
FEVER原曲はR&B男性歌手が歌っていた
このFEVERのオリジナルがリリースされたのは1956年(昭和31年!)のこと。
歌ったのはリトル・ウィリー・ジョンというR&B系の男性アーティストでした。
彼のことを調べてみたら、なかなか凄まじい生涯でして。
ゴスペル合唱団に在籍中、才能を認められて16歳でプロデビュー!
18歳でレコード契約した翌年には『FEVER』が全米24位、R&Bチャート1位の快挙!
ところが短気なのとアルコール中毒で度々トラブルを起こし、27歳で殺人を犯して逮捕服役、収監中に心臓発作で31年の人生に幕を閉じたという。。。
なんだかFEVERという歌を世に送り出すために生まれてきたような人、という印象を受けました。
エルヴィス・プレスリーが時代を超えて愛される理由
あのエルヴィス・プレスリーも、ライブでFEVERをカバーしています。
なぜ彼が時代を超えて愛されるのか?
その答えは、このライブ動画だけを見ても感じ取れます。
実力とダンディーな色気は言うに及ばず、彼には無邪気な少年心と、直感的なサービス精神が備わっているんですね。
特に中盤 1'00〜1’15 のところ、アドリブでいろんなことをしてます。
歌詞内容に合わせてキスする仕草をしたり、マイクでふざけてみたり。
こんな風に歌えて、それがサマになってしまう男は、地球上でエルヴィスただ一人でしょう!
気づいたんですが「チックス(ひよっこ)」という歌詞を「キャッツ」と歌い替えてますね。
男性をたぶらかす若い女性のことを歌った内容なので、訳すとしたら「メス猫」でしょうか^^
マドンナによって電子化された世紀末の新生FEVER
これまでお聞きの通り、FEVERという歌は、楽曲構成も楽器編成も至極シンプルかつミニマルなもの。
ボーカル以外はウッドベースとドラムのみ。3人いれば成り立ちます。
そんなFEVERを大胆に衣装替えさせた大スターこそが、マドンナでした。
エレクトロなダンスビートで、モダンなフロアサウンドへと昇華したFEVER。
彼女が最も挑発的で最もクリエイティブだった90年代前半にリリースされた衝撃作『エロティカ』(1992年)に収録、4作目のシングルとしてヨーロッパ圏でリリースされました。
圧巻なのは、かつての古き良きFEVERを覆す未来的なビジュアル!
全身に金粉をまぶして炎の化身となったマドンナ、オレンジ頭のおかっぱマドンナ、タイの民族衣装に身を包むマドンナ。
変幻自在なイメージで、かつてないマドンナ像を生み出しています。
若きステファン・セドナウイ監督を起用した本作は、マドンナのプロモビデオとしては初めてCGを導入した意欲作でもありました。
ちなみにマドンナが他人の作品をカバーするのはとても珍しいことで、今回その経緯を調べていて思いがけない発見がありました。
サウンドプロデューサーのシェップ・ペティーボーンによると、それは偶発的に生み出されたカバーだったようで。
アルバム用にボーカルを録り終えたばかりの『Goodbye to Innocence』という歌があり、マドンナがそのバッキングサウンドに合わせて何気なく『Fever』を口ずさんだら見事に当てはまり、急遽楽曲を差し替えることになったというのです。
その際、マドンナ本人が大量に歌詞を書き加えたことも特筆すべき点でしょう。
なぜ完成度の高い『Goodbye to Innocence』が当時『エロティカ』に収録されず、ワーナーミュージックのコンピレーションアルバムだけにひっそり収録されたのか、長年の謎がやっと解けました^^
いずれにせよ、そんな偶然がなければ、マドンナがFEVERをカバーすることはなかったわけで!
凍りつく炎のように美しい、このビデオクリップが誕生することもなかったわけで!
ジェームズ・ブラウン、サラ・ヴォーン、そしてビヨンセ
他にも名だたるトップスターたちがFEVERをカバーしています。
ジェームズ・ブラウンは、ブラスバンドを従えて活きのいいソウルに🎷
サラ・ヴォーンも、ブラスバンドを導入しつつおしゃれなナイトミュージックに🌇
僭越ながら、最後は僕のカバーで締めさせていただきます<(_ _)>
あなたのお気に入り、見つかりましたか?
本記事がお気に召したら以下のブログランキングをポチしてください。サポートありがとうございます。
◾️ヒデキマツバラLIVE動画◾️
モーツァルトに扮して奏でているのはバッハの神曲『アリオーソ』😇
◾️ヒデキマツバラLIVE動画◾️
晩夏の海をイメージしたオリジナルソング『アフロディーテ』🐚