ヒデキマツバラの猫道Blog

愛猫家ミュージシャン、ヒデキマツバラの猫道(キャットウォーク)ブログ

ダニー・ミノーグの色気に潜むインテリジェンス 〜自己嫌悪から抜け出せないあなたへの伝言〜 - HI-IQ of Dannii Minogue -

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大スキャンダルの渦中にいたダニー・ミノーグ。

世間から猛バッシングの末、音楽シーンへの復帰が絶望視される中で産み落とされたのが「All I Wanna Do」

この楽曲によって、ダニーに吹き付けていた嵐のような向かい風が、一気に追い風へと転じました。

 

彼女を特集してきたシリーズ最終回です。

 

ダニー・ミノーグ Part 1

ダニー・ミノーグ Part 2 

  

 

脱アイドル宣言

「All I Wanna Do」でダニーが変化したのは、外面的なイメージだけではありません。

リスナーを魅了したのは、本心を打ち明けた歌詞にありました。

(歌詞は ダニー・ミノーグ Part 1 をご参照ください)

 

All I wanna do is touch you

(あなたに触れたい それだけが私の望み)

 

一見すると単なるラブソングに見せかけた歌詞。

そこには、数々のスキャンダルに対する彼女なりの返答がありました。

ダニーは、アイドルにとって最大の禁句を歌い上げたのです。

 

「私はあなた(ファン)が理想としてきた無垢な女の子じゃない」

 

そもそもアイドルの役目とは、ファンの理想を体現すること。

そこをダニーは歌詞の中で「もうみんなが理想とするアイドルじゃいられない」と暗に告白したのです。

 

離婚、ヌード、整形という騒動続きによってネガティブイメージの刻印を押され、落ちるところまで落ちきった名声。

ダニーはそこから更に落ちるのでも開き直るのでもなく、ネガティブイメージを受け入れた上で歌にしたのです。

 

私だって生身の人間に過ぎない。

寂しい時には、衝動的に誰かに抱いて欲しくなる夜だってある。

 

この潔さこそ、吉と出たわけですね。

ダニーの率直さ、勘の良さ、そしてインテリジェンスがブレンドされた瞬間でした。

  

真綿のように肌触りの良い毛並みをした白いネコに見せかけて、鋭い爪と牙のようなセンスとIQを持ち合わせたダニー。

その魅力に気づいたリスナーは、もう彼女を「ミノーグ家の妹」呼ばわりすることはありませんでした。

 

あなたに触れたい 〜歌詞の行間から届いたメッセージ〜

僕がダニーの大ファンになったのは、この「All I Wanna Do」収録のサードアルバム「ガール」の革新的で独創的な音楽性がきっかけでした。

でも彼女を取り巻いていた危機的状況から歌詞を読み解いていくうち、彼女の知性と人間的な器の大きさを知り、2度惚れてしまいました。

 

All I wanna do is touch you

(あなたに触れたい それだけが私の望み)

 

この「あなた」というのは、文字通り目の前にいる第三者のことを指しているのでしょうか?

いや、もしかしたら「自分自身」のことを意味しているのかもしれません。

 

僕なりの解釈で恐縮ですが、歌詞の行間から読み解いたメッセージをここに書き綴っていきます。

 

様々な失敗をして落ちるところまで落ちた。

だけど恥じる必要はない。

人間、失敗したり欲望に負けてしまうことだってあるから。

 

世の中の嫌悪と嘲笑、非難に晒された。

だけど自分自身の存在まで否定する必要はない。

そこから学べたことがあるから。

 

誰しも自分から目をそらしたくなることがある。

自分の犯した過失、至らなさ。

内に秘めた愚かなる欲望。

 

そんな自分から逃れることもできるのだろう。

だけど、そんな自分を抱きしめることだってできるはず。

 

この世で一番困難なこと。

それは、ありのままの自分に触れること。

 

世の中があなたを見放しても、あなたは自分自身を見放してはならない。

なぜなら、あなたが弱く愚かであるほど、強く賢くなれる可能性を秘めているから。

あなたが役立たずであるほど、誰かに必要とされる可能性を秘めているから。

 

今のあなた自身に触れてごらんなさい。

あなたにどんな過去があろうと、今この瞬間のあなたは特別な存在。

 

あなたにとって、過去は単なる模試にしか過ぎない。

今こそ本当のあなた自身を試すべき時。

あなたの可能性を世界へ開くために。

 

大西洋の向こう側から

失敗しても堂々と前を向いている人の生き様というのは、どこかで誰かがちゃんと見てくれているものです。

ダニーのこともまた、大西洋を超えた先から見つめていた人がいました。

世紀の大スター、マドンナです。

 

彼女はダニーのアルバム「ガール」を評価し、自身のレコードレーベルMaverick Records(マヴェリック・レコード)でライセンスしてアメリカでのリリースを打診したと言われます。

姉カイリーが悲願としていた音楽大国アメリカ進出の夢が、こんな形で妹に巡ってくるなんて誰が想像したでしょう。

残念ながら実現までには至りませんでしたが、ダニーのエレクトロニックな野心作「ガール」は確実にマドンナに影響を及ぼしたようです。

 

翌年マドンナがリリースしたアルバム「Ray of Light」では、内省的な歌詞とエレクトロニックなサウンドが融合。

マドンナの最高傑作と評価され、初のグラミー賞を獲得するに至りました。

 

最近、僕がとても印象に残った言葉があります。

「自分を解放することが、他の人々の解放にもつながる」(by アデル)

 

まさにそうした意味で、ダニーの自己解放がマドンナを触発してたように思えてなりません。

 

クラブミュージックの女王

1997年8月18日 ダニー・ミノーグ「All I Wanna Do」リリース。

11枚目のシングルにして、ついにダニーはキャリア初のトップ5入りとなる全英4位を獲得。

UKクラブチャートでは、初のNo.1に輝きます。

 

All I Wanna Do(BBC音楽チャート番組 Top Of The Popsより)

www.youtube.com

  

デビュー9年目、とうとうキャリアが花開いたダニー。

本作を皮切りに、その後リリースする楽曲は次々とクラブチャート首位を獲得。

以後18年間にわたって、14曲連続No.1という前代未聞の記録を打ち立て「クラブミュージックの女王」とまで呼ばれたほど。

 

とはいえ、浮き沈みの激しいUKミュージックシーンの中で、その後もダニーには紆余曲折ありました。

そんな中でアップダウンを繰り返しながら、ダニーは着実に本作を上回る成功を収めていったのです。

 

コロナ2020

アイドルの座から転落していったダニーの復活劇を物語る名作「All I Wanna Do」

イギリスのオフィシャル・レコード・カンパニーによると、ダニー最大の売り上げを記録した楽曲だと認定されているのだとか。

 

世界中がコロナ禍に揺れるこの夏、ダニーは唐突にこの曲の新バージョンをリリースしました。

 


Danni All I Wanna Do 2020 - Lyric Video

 

甘美で壮大なチルアウト作品に生まれ変わっています。

アコースティックな歌い出し、そこへムーディーなシンセパッドや民族ドラムが加わっていきます。

 

プロデュースはトラウザー・エンスージアスツことイアン・マスターソン。

ダニーのボーカルが再レコーディングされてます。

このバージョンが初演されたのは、Take Thatによる2017年オーストラリア公演の前座を務めた際でした。

 

なぜ原曲のリリースから23年も経った今になって、新バージョンでのリリースなのでしょう?

それは歌詞が大きな意味を持っているからに他なりません。

 

All I wanna do is touch you

(あなたに触れたい それだけが私の望み)

 

そう、ソーシャル・ディスタンスのため、相手に触れたくても触れ合うことがかなわない。

全世界がそんな現状だからこそ、この歌詞が胸に迫ってくるんですね。

より鮮明に、切なさまで帯びて。

 

時代を超えて、人の胸に響く音楽メッセージ。

あのスランプ期の自分を受け止められたからこそ、ダニーはそんな名作が残せたのでしょう。

 

 

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PLANET EARTH ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara

 

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