ヒデキマツバラの猫道Blog

ドラネコ視点の少し風変わりな猫道(キャットウォーク)ブログ

僕を本気にさせた男 - I Believe in The Power of Creation -

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水無月

梅雨入りして、湿度も室温も高い朝。

換気が済んだ窓を閉め、エアコンのスイッチを入れたら、インセンスに着火。

パウンディングサーフのお香をたきしめ、スタジオを海辺の香りで満たす。

 

BGMにはカイリー・ミノーグのエレクトロなアルバム「Kiss Me Once」

iMacを立ち上げる束の間、メール諸々のチェック。

嗅覚と聴覚が刺激され、気分が上がったところで、ブログに向かう。

 

制作漬け

ここしばらく、まともにベッドで寝ていない。

食事をとるのは、思い出した時。

食後そのまま、スタジオのソファーに突っ伏して仮眠。

 

制作漬けの毎日が、幸せで仕方ない。

手がけているのは、和弥のオリジナルソング「こもれび」

 

深夜、目を覚ましたらアイディアの虜になっている。

気づけばそのまま12時間ぶっ通しで作業してることはザラで、オフの日など20時間近く没頭したり。

 

こんな調子でもう半月近く、外部との接触を怠っていたらしい。

心配した妹や叔母さんから、続々と入ってきた安否確認。

ご心配かけて申し訳ない。

僕は健康体そのものなのでご安心を。

 

なぜなら創作意欲に突き動かされている時、そこから得られる糧ほど肉体と精神と魂を満たすものはないから。

アイディアを音像化していく瞬間こそ、我が人生最高の喜びだ。

そして楽曲制作の中にこそ、人生最大の興奮と快感、そして快楽までもが詰まっている。

 

麗しい声の男

和弥(25歳)から初めてコンタクトが入ったのは、ひと月前。

「直接お会いしてお話を伺うことってできますか?」

受話器越しに耳にする彼の声が、やけに印象に残った

なんて綺麗な声の持ち主だろうか。

 

こうしてマイナー調のバラードとして持ち込まれた「こもれび」

自身のYouTubeサイトが開設1周年を迎えるのを記念して、6月16日に発表、公開する運びだという。

 

「まず、どんな歌か聞かせてもらえますか?」

すると和弥はアカペラで歌い始めた。

僕は自分の耳を疑った。

 

和弥の声が豹変したのだ。

毛糸玉で遊んでいるオスの子猫、それが和弥の普段の話し声だとしたら、その歌声はサバンナを疾走する色艶麗しいチーター。

 

和弥のボーカルは、超絶にハイトーンだった。

そこには天性のリズム感まで宿っている。

魅了されずにいられなかった。

 

スイングがかった和弥の歌声を聞いてるうちに思う。

マイナー系バラードにとどめておくには惜しいな。

 

もう一つ注目したのは楽曲性。

荒削りながらも、繰り出すフレーズがことごとく美メロなのである。

楽曲全体に不思議なポテンシャル(可能性)が宿っていた。

 

そのボーカリストだけが持っている特性。

楽曲そのものが求めているサウンドスタイル。

それを見抜くのが、サウンドプロデューサーとしての醍醐味。

 

「楽曲プロデュースのご依頼承りました」

歌い終えた和弥に、僕は告げた。

「まずバッキングサウンドのデモテープ制作から着手します」

 

仮縫い

2週間の出張から戻ってきた和弥が、僕から受け取った一本のデモテープ。

そこに収録された「こもれび」は、痛快なまでに転身を遂げていた。

 

バラードの導入部に続いて現れるのは、メジャー感あるR&Bテイストのアーバンポップ。

それが和弥から託された「こもれび」に僕が着せかけたサウンドデザインだった。

バックでR&B系ダンサーが踊る姿まで見えてきそうな音使い、と言えばわかりやすいだろうか。

 

「すごく気持ちよくて歌いやすいです」

和弥の顔がほころぶ。

 

楽曲の仮縫いが済んで方向性が固まったところで、さらに和弥の声に合わせて微調整しながら仕立てていく。

柔軟でありながら、迷いなく即断即決する和弥の性格も、快調にディスカッションを後押ししてくれる。

意気投合して、互いの波長は最高だった。

 

爆発したクリエイター魂

連日のように和弥と顔を合わせる日々が続き、いよいよボーカルのレコーディングに入る。

僕は想像もしてなかった。

自分にこんな幸福な日々がもたらされるとは。

 

録り終えた和弥のボーカルテイクを前に、僕は興奮しっぱなしだった。

表情豊かでドラマティック、青空へと突き抜けるようなハイトーンボーカル。

 

これほど魅力的な男性ボーカルを扱える機会に恵まれるとは。

まるで信じられないほどの宝を手にした気分だった。

 

和弥のボーカルが、僕の創造性を刺激する。

クリエイター魂に火がついた。

 

それは昼夜の区別をも見失う、最高の5日間だった。

頭の中にあったのは、ただ一つ。

和弥の歌声に、唯一無比のサウンドをまとわせたい。

 

艶やかなボーカルに酔いしれながら制作に向かう。

絶対最高のものにしてみせるからな!

待ってろ、和弥!

 

その歌声がインスピレーションとなって、自分の中の引き出しが、あらん限りに開いてゆく。

今まで試みたことのないサウンドが湧き上がるまま、楽曲に投入する。

 

まるで目に見えない遊園地。

ビジョンが拓けて、尽きることのないアイディアの塊がテトリスのようにカチッカチッとハマってゆく。

楽曲が成長し始めた証だ。

 

その勢いは、編曲の最終局面を迎えてさえ衰えない。

よし、このパートは完成したな!

そう思って眠りにつくも、翌日それを上回るアイディアを発見する、そんな毎日。

 

日夜、和弥の歌声が、僕の体の細胞という細胞に染み込んでゆく。

それが僕の中の潜在的な力を掴んで引っ張り出す。

これぞまさしく真のコラボレートだ。

 

和弥という人間の縮図

こうして完成形へとひた走っていた「こもれび」の編曲が昨夜、ついに完結。

あとは最終的なミックスダウンとマスタリングを残すのみとなった。

 

サウンド的に、なんと形容したら良いものか。

バラードで、R&Bで、アーバン、そこにロッキンな要素までを融合。

 

爆発的にアイディアが膨らんだ結果、70トラックを超える大編成に。

優しいエレピから、デジタルなエレクトロサウンド、そこに熟した弦楽ストリングスやハープが顔を覗かせ、白熱のバンド系サウンドへと激化していく。

 

クールなのに、ホット。

繊細なのに、ダイナミック。

雲ひとつない青空なのに、哀愁が漂う夕暮れ。

そんな魔法のようなサウンドだ。 

 

今、ふと閃いた。

もしかするとそれは、和弥という人間の縮図なのかもしれない。

 

僕なりのリスペクト

今日、和弥が来る。

編曲の仕上がり具合を確認しに。

仕事を抜け出してまで(笑)

 

会うのはレコーディング以来。

彼の反応が楽しみで、心浮き立って仕方ない。

 

それともう一つ。

今日は彼のことを、初めて「和弥」と名前で呼び捨てにするつもりだ。

それが和弥に対する、僕なりのリスペクト(敬意)だから。  

 

 

■今月のライブ動画■

雨のニューヨークにインスパイアされた哀愁ハウス「ブルー・マンハッタン」をアップしました!


BLUE MANHATTAN ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara