ヒデキマツバラの猫道Blog

音楽、マインドフルネス、それにユーモアを愛するネコ目線のキャットウォークブログ

ひまわりの咲いた日に - On The Day When A Sunflower Bloomed -

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8月1日 17時25分

僕はこの世に生を受けた。

 

そこで今日は、皆さんにお目にかけたいものが。

 

母が書いた本「ひまわりの咲いた日に」

僕が5才のバースデイを迎えた日、母が自費出版した育児エッセイ集である。

 

 

育児エッセイ

母が亡くなってから、改めてこの本に目を通してみた。

すると、第一話目を読み終えただけで、もう胸がいっぱい。

 

母は几帳面で気丈な人だったが、僕の出産時にもとことん几帳面で気丈な人だったことが伺える。

例えば、出産2日前まで、いつも通りピアノレッスンや家事に従事していたこと。

例えば、出産当日、違和感を感じて病院に行くも、産婦人科医から「まだ早い」と告げられ、真夏の炎天下を一人で歩いて帰宅したこと。

例えば、出産の直前まで家事をしていたこと。

 

なんてタフな母!

現代の日本社会ではありえないくらいタフな妊婦生活。

 

これまで幾度も読んできた本なのに、母の介護と死を経た今読むと、エピソードのひとつひとつが胸に迫る。

大変な思いをしながら産み育ててくれたんだなと。

 

タイトルに「ひまわりの咲いた日に」とつけてあるのは、第一話目のラストに由来する。

そこに書かれてあるのは、生まれたばかりの僕に宛てた、母からのメッセージ。

 

そのメッセージは時空を超え、母を亡くした今の僕の心に突き刺さった。

思わずむせび泣き、先が読み進められなかった。

死してなお、母の息子を思う気持ちがそこにあったから。

 

確か去年も書いた気がするが、誕生日とは「自分に生を授けてくれた両親に感謝する日」だと僕は考えてる。

ふた親とも見送った今、両親を偲びつつ、僕の生まれた日を綴った母のエッセイ第一話目を紹介していこう。

 

*読みやすくするため、段落ごとに新たな見出しをつけました。

*文章の一部に、現代では不適切だと思われる表現がありますが、当時の時代背景や公序良俗に鑑み、原文通り掲載します。ご了承ください。

 

ひまわりの咲いた日に

小さな生命

小さな生命が私のお腹に宿っていることを知ったのは、雪がちらつくとても寒い2月の朝でした。

「妊娠3ヶ月です」

病院の先生から言われた時は、母になる責任の重さと、やっと本当の女になれたような不思議な気持ちでした。

 

つわりはほとんどなく、イチゴとアイスクリームが毎日のように食べたくなったことくらい。

お腹のヒデキは順調に大きくなってゆきました。

予定日は8月13日。

 

大きなお腹を抱えて、7月30日までレッスンと家事を続けました。

そんな私の気持ちが通じたのか、産休に入って間もない8月1日の夕方、ヒデキは予定よりずっと早く生まれました。

 

出産の朝

「今から病院まで車で送って」

出産の日の朝早く、体の異常に気づいた私は、主人に頼みました。

 

ところが主人は全然取り合ってくれません。

「どこも痛くなくて、そんなにピンピンして歩けるのに、今日生まれるわけがない」

 

自宅から歩いて十数分のS病院。

一人で歩いて行くことはできても、入院用の大きなスーツケース2つはとても持てません。

仕方なく8時過ぎまで待って、会社に出かける主人の車で送ってもらいました。

 

診察の結果「明日の朝くらいになるだろう」と言われました。

「今、病棟が空いていないので、家で待っててください」

先生は、そのようにおっしゃりました。

 

仕方なく荷物を受付に預け、暑い陽射しの中を歩いて帰りました。

もうかなり体がだるく、家に帰っても一人の私は、とても心細くて落ち着きません。

 

異変

当時、私の母は、父の転勤先の米子にいましたので、おいそれとすぐには帰れません。

かねてお願いしていた親友に電話をかけ、お手伝いに来てもらいました。

出産後はしばらく家を空けることになるので、お台所の片付け、掃除、洗濯を一緒に手伝ってもらいました。

 

そうこうしているうちに、やはり心配だったのでしょう、主人が帰って来てくれて、

「生まれてないじゃあないか」と笑います。

 

午後1時ぐらいから、軽い痛みが始まりました。

まさか陣痛とは思わず、親友とおしゃべりしていましたら、痛みが15分ずつくらいの間隔になってきました。

 

あれでも、と思い、3時過ぎ、主人の車で親友と病院へ。

外はまさに真夏。

重い体に、いくらでも汗が流れます。

 

産声

診察の結果、すぐ陣痛室へ。

まもなく、どうしていいか分からないような痛みが数分おきにあり、すぐに分娩室に入りました。

それから十数分後、元気のいい産声とともに、男の子の誕生。

 

「お産の模範だね」

と院長先生がお褒めの言葉をくださったほどの安産に、自分でも驚きながら、

「どうも有難うございました」

思わず涙が出て仕方ありませんでした。

 

ヒデキは体重3280グラム、身長52センチ。

標準を少し上回る、色の白い男の子でした。

 

ヒデキ誕生のニュースは、親友が大活躍。

方々に電話をかけてくれ、夕暮れには主人とそのお兄さんやお友達やら、多くの方がお祝いに来て下さいました。

 

ひまわりへのメッセージ

ギラギラ照りつける太陽の下で、その暑さにも負けず、じっと咲き続けるひまわりの花。

その花のように、ヒデキもどんな境遇にあっても、どうぞ明るく、元気で大きくなってください。

 

( 松原リディア美江著「ひまわりの咲いた日に」第一話より)

 

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ヒデキマツバラ 生後2ヶ月

 

 

ライブ動画

七つの海を越えていくオリジナルソング「SEVEN SEAS」ライブ動画


SEVEN SEAS ヒデキマツバラ 〜七つの大海〜 by Hideki Matsubara