メロンの生ハム添え。
これほど嘆かわしい組み合わせがあろうか。
僕はメロンが大好きだ。
生ハムも大好きである。
どちらも大好きなのに、
ひとたび両者が縁組を結んだが最後、
その魅力的な味わいも風味も台無しだ。
そこで僕は、皿の上で両者の仲を引き裂く。
メロンはメロン、生ハムは生ハム、
と、別個に分けて食べるのだ。
しかし一度は結ばれた者同士、互いに未練があるらしく、
強制的に離縁させても、移り香はどうにもならない。
こうして、僕は不承不承、
生臭いメロンと、甘ったるい生ハムを食す羽目になる。
いったい誰がこんな策略を持ちかけたのだろう。
汁気たっぷりの甘さ、口どけ良い食感をもつメロンは、果物帝国の女皇帝。
何者とも結ばれず、永遠に独身を貫くべきである。
そして完熟の極みに達すると、誇り高くスプーンですくいとられ、
甘美な幸福で我らをメロメロにさせる。
それが彼女の宿命なのだ。
一方、噛めば噛むほど奥深い生ハムは、加工肉連邦の重鎮。
メロンのような絶世の美女と連れ添うべきではなく、
味も香りも主張しすぎず、歯ごたえある堅実な野菜と添い遂げたい。
オリーブオイルや黒胡椒、マヨネーズ等であえれば、なお結構。
焼肉のレタス巻きごとき新婚カップルには到底真似できない、
熟年夫婦なればこその絶妙な味わいが生まれるのだ。
メロンの生ハム添え。
それは、さながらクレオパトラとシーザー。
皿の上のエリザベス・テイラーとリチャード・バートン。
破滅へ突き進む、悲劇の一品である。
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