ヒデキマツバラの猫道Blog

音楽、マインドフルネス、それにユーモアを愛するネコ目線のキャットウォークブログ

雨物語の歌を作る秘訣 ■トランス名盤 Binary Finary - 1998/1999■ - How to design your rainy heart -

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引き続き、オリジナルソング「The Sound of Rain」制作について書いていきます。

前回は、歌詞の裏側にある物語についてご紹介しました。

hidekimatsubara.hatenablog.com

 

「The Sound of Rain」はオリジナル作の中でも特に気に入ってる作品です。

その理由は4つ。

① 物語性とリズム感を持った歌詞

② 虜になるユルめのトランスサウンド

③ 少年時代に大好きだったアイドルの影響

④ 雨音が喚起する想像力

こうした諸々のことを、これから2回にわたって綴っていきますね。

 

 

雨音リフレイン


THE SOUND OF RAIN ヒデキマツバラ by Hideki Matsubara

 

作詞する際、大事にしたいポイントは、言葉の語感とリズム感を生かすこと

本作の場合、聴覚上の特徴になっているのが、リズミカルに繰り返すサビの歌詞です。

 

1番では

The sound of rain, rain, rain
ザ・サウンド・オブ・レイン・レイン・レイン

Once again, gain, gain
ワンス・アゲイン・ゲイン・ゲイン

 

2番だと

You could be mine, mine, mine
ユー・クッド・ビー・マイン・マイン・マイン

See a sign, sign, sign

シー・ア・サイン・サイン・サイン

 

1番の「〜エイン」2番の「〜アイン」それぞれにライム(脚韻)を踏んでいます。

そうすることで、天からパラパラ降りて来る雨粒を肌で受ける感触を、言葉で表現することができました。

そんなこともあって、その部分のバックコーラス三声体をセルフで重ね録りしていくのが嬉しくて仕方なかったです^^

 

言葉には潜在的な可能性があります

言葉の中にある、音楽的な可能性

言葉の中にある、絵画的な可能性

言葉の中にある、五感的な可能性

それらが三位一体になった時、自分にしか書けない歌が生まれるんです。

 

雨音トランス

通常サウンドをプロデュースする際、僕は考えうる限りありったけの音を使います。

パレットにあらゆる絵の具をのせる画家のごとくカラフルに。

 

一方「The Sound of Rain」のトラック編成は最小限に絞りました。

冒頭のグロッケンやサブで鳴ってるシンセシークエンス音を除けば、メインはトランスビートとベースライン、それにシンセリードのみ。

楽曲構成としても、Bメロ以外はひたすら循環コードを用いたミニマルな展開です。

 

だからこそ、シンセリードのフィルターを開閉することによって、ドラマ性を演出できました。

AメロやBメロでは雨粒のようにポツリポツリと弾んでいたシンセリードが、サビや間奏ではシャワー(通り雨)のごとく頭上に降り注ぐわけです。

シンセリードひとつでも音質を変化させるだけで、雨量の変化や場面の変化、主人公の心境の変化まで、サウンドでデザインしていくことができるわけですね。

 

このシンセリードは、ローランドのJP8080で作りました。

後述するアーティスト達も愛用しているシンセモジュールの名器です!

 

サウンドプロデュースのポイントは、楽曲世界を音で再現することに尽きます。

例えば、本作で描かれている空は、常にグズついた状態にあります。

そこに色とりどりの傘が開き、あの子が赤い水玉の傘をさす、そこだけに色があるんですね。

だから多彩な音使いで聞かせる必要はなく、最小限のサウンドで充分に世界観が表現できるわけです。

 

雨音オマージュ

本作ではトランシーな音使いや展開を基軸にしつつ、BPMを下げて、トランスにしては遅すぎるほど、まったりとしたテンポ感に仕上げています。

このテンポ感とベースラインに関しては、とある歴史的トランス名盤を下敷きにしました。

 

それがドイツのトランスユニットBinary Finary(バイナリー・ファイナリー)による「1998/1999」です。

トランス全盛期の幕開けとなる1998年に「1998」と題してリリースされ、翌年には「1999」として再リリース。

フェリー・コーステン、  DJティエスト、マット・ダレイ、ポール・ヴァン・ダイクといったトランス界のスーパースター達がこぞってリミックスを量産した名盤です。

その中でも特に僕のお気に入りだったのが、Kay Cee(ケイ・シー)によるリミックス。

 


1999 (Kay Cee Remix) - Binary Finary

 

他のリミックスと違って、キラ星のごとき派手さや疾走感はないのだけれど、絶妙なテンションと重量感で魅力的に仕上がっています。

特に、安定感のあるベースラインには病みつき。

さらに、美麗なシンセストリングスのブレイクダウンにはため息。

一旦プレイすると、延々にループしながらずっと聴き続けてしまう楽曲です。

 

このリミックスにオマージュを捧げて、ヒデくん流に「1998/1999」を歌モノに発展させたのが「The Sound of Rain」と言えるのかもしれませんね。

(続く)

 

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■ライブ動画■

新しいライブ動画をアップしました。
母のピアノと共演したポール・モーリア作品です。


【ポール・モーリア】涙のトッカータ / Paul Mauriat - Toccata / ミュージックハウス美美の環