5月連休、例年どこか1日は雨に降られるものです。
でも今年はずっと五月晴れが続きました。
まるで、あつらえたように。
旅立ちの朝
連休の1日だけレッスンをお休みして、亡き母の故郷へ車を走らせます。
愛猫だったチロ(17)とマック(6)を乗せて。
2年間の通院生活で、何十回となくこの車に乗ったチロ。
かたや、保護して6年10ヶ月目にして、これが初ドライブのマック。
あの12月の悲しい別れからちょうど半年。
骨壷に収まったチロとマックに、生きている時と同様、語りかけてきました。
淋しがらないように。
チロが、マックが、そして僕自身が。
「『ありがとね』しよう」
留守番役のミニ姉ちゃん(18)に最後のお別れをさせます。
早めに発ったから、道路はさほど混み合っていません。
アクセルを踏む右足は、速すぎず、遅すぎず。
飛ばす気なんてありません。
1秒でも長く、この子たちとドライブしていたいから。
街並みがはるか後方に流れて消え入る頃。
中国山地のまぶしい光と緑が、チロとマックを出迎えました。
別れのデジャ・ヴ
「先に済ませとこうか」
合流した叔父たちと、日本昔ばなしに出てくるような、小高い丘の上の山寺へ向かいます。
そこからあぜ道をさらに登った先。
大きく枝と根を伸ばしたクスノキに守られながら横たわるのは、母方のご先祖さまたち。
その敷地横のなだらかな斜面に、かつて暮らしを共にした愛猫たちも眠っています。
シャベルを手に取る叔父。
土中の大きな石に阻まれ、難儀しながら斜面を掘り返します。
愛する家族とのサヨナラは、1度きりでは終わりません。
息を引き取った時のサヨナラ。
火葬に出す時のサヨナラ。
それに、納骨で家を発つ時のサヨナラ。
デジャヴのように繰り返してきた別れ、そしてまた別れ。
でも、これで本当に最後のお別れです。
ハートが半分こ
もっと大きな石が埋まっていたらいいのに。
叔父が穴掘りに手こずれば手こずるほど、この子たちを手放さずに済むのです。
傍(かたわ)らには、お墓掃除に精を出す親戚の子供ら。
その賑やかな声に誘われます。
別れを惜しみたい自分。
子供たちを前に、笑顔を演じていたい自分。
ハートが半分こ半分こ。
骨壷2個分の青空
どっちつかずな気持ちのうち、叔父がシャベルを置きました。
骨壷2個分の穴が、ぽっかり口を開けています。
あつらえたように輝く青空。
新緑に衣替えした樹々。
あぜ道で歌い始めるカエル。
何もかも美しくて。
束の間の楽園のように。
キラキラと切なくて。
永遠に続くものなんて、ない。
わかってるんです。
時は移ろい遠ざかることも。
胸で押しとどめた涙に、出口なんて見つからないことも。
チロ、そしてマックが地中に収まります。
ほんの骨壷2個分の青空の下で。
その時です。
あっと思う間もなく、土が2匹を覆い隠したのでした。
振り返り、振り返り、下る坂道はどこまでも青く。
チロとマックは、中国山地の一部になりました。
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